
💡 この記事の要点 (Key Takeaways)
最高裁で「違法」とされた生活保護基準引き下げですが、行政は理屈を変えて減額を維持。現在は「反復禁止効」を争点とした審査請求が進行中。2026年には第二次訴訟へ発展する見通しです。
この記事のポイント
- 2025年6月判決後も混乱:最高裁で「違法」とされたが、行政側は別理屈で減額を維持。
- 新たな争点:「反復禁止効(理由の差し替えによる再処分)」と「平等原則」が焦点。
- 今後の展望:審査請求を経て、2026年には「法治主義」を問う第二次訴訟へ発展する可能性。
特定行政書士の田原靖弘です。
2025年6月27日、最高裁判所は生活保護基準引き下げ処分を取り消す判決を言い渡しました。これは、行政の広範な裁量権行使に対し、司法が厳格な判断を下した画期的な事例です。
しかし、判決から半年以上が経過した2026年現在、事態は収束するどころか、新たな法的紛争のフェーズに入っています。今回は、法律の専門家(特定行政書士)の立場から、なぜ解決に至らないのか、そして現在行われている「審査請求」の法的な争点はどこにあるのかを詳説します。
1. 最高裁判決と行政の対応の「ズレ」
まず、現状の対立構造を整理します。司法が示した判断に対し、行政がどのような対応をとったのか、その「ズレ」が混乱の主因です。
「デフレ調整(-4.78%)」について
- 専門的知見との整合性を欠いている。
- 判断過程に重大な過誤・欠落がある。
「別の計算手法」で再計算
理屈の書き換えによる遡及適用
違法とされた「デフレ調整」は撤回するが、下位10%層との比較手法を用いれば減額は妥当であると主張。▶ 原告には差額を「特別給付金」として支給
この「理屈の書き換えによる再処分」こそが、新たな火種となっています。
2. 「審査請求」における法的な論点
現在、原告側は厚労省の対応を不服として、行政不服審査法に基づく審査請求を行っています。行政手続の専門家として注目すべき法的な論点は、主に以下の2点です。
① 「反復禁止効」と判決の拘束力
争点:行政事件訴訟法第33条(判決の拘束力)の解釈。
「理由を差し替えれば、同じような不利益処分を再び行えるのか?」
🛡️ 行政側の主張
判決で指摘された数値の誤り等を修正した「全く新しい処分」であるため、法的に問題はない。
⚔️ 原告側の主張
最高裁はデフレ調整という「手法そのものの欠陥」を指摘した。数値をいじって再度減額を行うことは、実質的に判決を無視する脱法行為であり、「反復禁止効」に抵触する。
② 平等原則と行政の公平性
厚労省の方針では、訴訟原告には「特別給付金」を支給する一方、原告以外の受給者への対応は限定的または不透明な部分があります。
憲法14条(法の下の平等)の観点
同じ制度を利用し、同じ不利益を受けたにもかかわらず、訴訟当事者か否かで救済内容に差を設けることは、平等原則の観点から大いに議論の余地があります。
3. 今後の展望 (特定行政書士の視点)
特定行政書士は、行政庁に対する不服申立ての手続きを代理することができる資格です。今回のケースは大規模な弁護団が代理していますが、行政不服審査という手続きが、本来持つ「行政の自己是正」を促す機能を果たせるかが注目されます。
審査請求(行政不服審査)
不服申立てを通じて、行政庁に対し自ら誤りを正す機会を与えています。しかし、行政側が既存の方針を固持する場合、この手続きでの解決は困難が予想されます。
第二次訴訟への移行
審査請求が棄却された場合、2026年中にも新たな訴訟が提起される見込みです。これは単なる金額の多寡の話ではなく、「行政は司法の最終判断にどこまで従う義務があるのか」という、日本の法治主義・三権分立の根幹に関わる重大なテーマとなります。
まとめ
2025年の最高裁判決は「ゴール」ではなく、新たな「法的対話」の始まりでした。
行政には、形式的な理屈の整合性だけでなく、司法判断の重みを踏まえた実質的な解決策の提示が求められています。私たち法律実務家も、このプロセスがどのように進むのか、行政手続の適正性の観点から注視していく必要があります。
