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建設業許可#改正建設業法 2025#標準労務費#原価割れ禁止#建設Gメン#建設業 法改正#特定行政書士

改正建設業法で何が変わった?|標準労務費・原価割れ禁止と建設Gメン強化の全貌

公開: 2026/3/23
更新: 2026/3/30
田原 靖弘
15 min read

令和6年(2024年)6月に公布された改正建設業法は、令和6年(2024年)9月・12月、令和7年(2025年)12月の3段階で施行される。最大の焦点は第3段階(令和7年(2025年)12月12日施行)の「著しく低い労務費等による見積り・契約の禁止」と「原価割れ契約の禁止」である。中央建設業審議会が勧告する標準労務費(13職種分野)を基準に、元請・下請双方に規制がかかる。国土交通省は建設Gメンを72名から148名体制に拡充し(令和7年度現在)、違反疑義情報の受付・立入検査・改善指導を強化している。本記事では、元大阪府警捜査二課刑事・特定行政書士の視点から、改正法の全体像と実務対応を解説する。

💡この記事の要点 / Key Takeaways

2024年6月公布の改正建設業法は、2024年9月・12月、2025年12月の3段階で施行。標準労務費の勧告、原価割れ契約の禁止、建設Gメン148名体制による監視強化など、建設業界に大きな転換をもたらす改正の全体像と実務対応を、元大阪府警捜査二課刑事・特定行政書士が解説します。

田原 靖弘
✍ この記事の執筆者

田原 靖弘特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

捜査二課で建設業に関わる不正事案も経験。行政書士として建設業許可の申請・維持管理を支援しています。

令和6年(2024年)6月に公布された改正建設業法は、建設業界の「当たり前」を根本から変える法律です。特に令和7年(2025年)12月12日に全面施行される第3段階では、「著しく低い労務費等の禁止」と「原価割れ契約の禁止」という、これまでにない踏み込んだ規制が始まりました。

国土交通省は建設Gメンを72名から148名へ倍増させ、調査対象を約30,000社に拡大。令和6年度には違反疑義情報3,811件を受付け、調査1,143件(立入検査等を含む)、勧告・文書指導等649業者という過去最大の実績を記録しています。

元大阪府警捜査二課刑事・特定行政書士として、改正建設業法の全体像と、建設業者が今すぐ着手すべき実務対応を解説します。

改正建設業法の全体像:3段階施行スケジュール

改正建設業法は、一度にすべてが施行されるのではなく、3段階に分けて順次施行されます。各段階で何が変わるのかを正確に把握することが、対応の第一歩です。

施行段階施行日主な内容
第1段階令和6年(2024年)9月1日資材価格高騰に対応した契約変更の努力義務化、適正な工期確保
第2段階令和6年(2024年)12月13日技術者要件の合理化、ICT活用促進、監理技術者の兼務要件緩和
第3段階令和7年(2025年)12月12日標準労務費の勧告、著しく低い労務費等の禁止、原価割れ契約の禁止

第1段階と第2段階はすでに施行済みです。建設業者にとって最もインパクトが大きいのは、令和7年(2025年)12月12日施行の第3段階です。この段階で、標準労務費を基準とした労務費規制と、建設Gメンによる監視強化が本格的に始まっています。

元刑事の視点

法律の施行が段階的に行われるのは、行政が「準備期間を与えた」ということです。捜査の世界でも、事前に警告を与えたにもかかわらず改善しなかった者に対しては、より厳しい処分が下されます。「知らなかった」「まだ準備中だった」は、令和7年(2025年)12月以降は通用しません。

施行第3段階の核心:2つの新規制

規制①「著しく低い労務費等による見積り・契約の禁止」

改正建設業法の最大のポイントが、「著しく低い労務費等による見積り・契約の締結」の禁止です。これは元請・下請の双方に適用されます。

規制対象禁止される行為具体例
元請業者著しく低い労務費で下請に契約を強いる行為「この金額で受けなければ次の仕事は出さない」と圧力をかけるケース
下請業者受注獲得のために自ら著しく低い労務費で見積りを提出する行為競合他社を排除するため、標準労務費を大幅に下回る金額で入札するケース

従来は、元請による「買い叩き」が問題視されてきましたが、改正法では下請側の「不当廉売」も規制対象となりました。これは建設業の担い手確保という改正の根幹に関わる部分であり、労務費のダンピング競争を双方向から防止する趣旨です。

規制②「原価割れ契約の禁止」

工事の原価を下回る金額での契約締結が禁止されます。ダンピング受注は、品質低下、労働者の処遇悪化、そして担い手不足という悪循環を生みます。原価割れ契約の禁止は、この悪循環を断ち切るための規制です。

「原価」には、材料費、労務費、外注費に加えて、現場管理費や一般管理費も含まれます。したがって、直接工事費だけでなく、間接的な費用も含めた総原価を下回る契約が禁止の対象となります。

標準労務費とは何か — 13職種分野の基準値

標準労務費は、中央建設業審議会が建設業法に基づいて勧告する労務費の基準値です。対象は13の職種分野(鉄筋、型枠、住宅、左官、電工、塗装、とび、内装、空調衛生、土工、板金・屋根ふき、解体、鉄骨)です。

参考指標となるのは、国土交通省が毎年公表する「公共工事設計労務単価」です。令和6年度の全国全職種単純平均は24,852円(前年比6.0%増)で、13年連続の引き上げとなっています。

項目内容
勧告主体中央建設業審議会
対象範囲13職種分野
基準の性格法的拘束力のある勧告(単なるガイドラインではない)
参考指標公共工事設計労務単価(令和6年度全国平均24,852円)
適用対象元請・下請を問わず全ての建設業者

注意すべきは、標準労務費は「最低賃金」とは異なる概念だという点です。最低賃金は個々の労働者に対する最低限の時給を定めるものですが、標準労務費は建設工事の請負契約における労務費の基準を定めるものです。つまり、契約金額の中に適正な労務費が含まれているかを判断するための基準値です。

元刑事の視点

捜査の現場では「数字が物を言う」と叩き込まれます。行政も同じです。標準労務費という明確な基準値ができたことで、「著しく低い」かどうかの判断が数字で下せるようになりました。感覚的に「ちょっと安いかな」ではなく、基準値との乖離率で客観的に違反が認定される。曖昧さがなくなった分、言い逃れも通用しなくなるということです。

建設Gメン体制の強化 — 72名から148名へ倍増

改正建設業法の実効性を担保するために、国土交通省は建設Gメン(建設業法令遵守推進本部の調査担当職員)の体制を大幅に強化しました。

項目数値
建設Gメン人数72名 → 148名(約1.9倍)
調査対象企業数約30,000社
違反疑義情報受付3,811件(令和6年度)
立入検査等1,143件・調査(令和6年度)
勧告・文書指導649業者(令和6年度)

建設Gメン148名で約30,000社を調査するということは、1人あたり約220社を担当する計算です。しかし、違反疑義情報が3,811件寄せられているという事実は、行政が業界全体を「見ている」ことを意味します。情報提供は匿名でも可能であり、下請企業や現場の労働者からの通報が調査のきっかけになるケースが増えています。

建設Gメンの具体的な検査内容や、立入検査を受けた際の対応方法については、建設Gメンの立入検査を受けたら|元刑事の行政書士が教える正しい対応と準備で詳しく解説しています。

下請企業が知っておくべきこと

改正建設業法は、下請企業の保護を大きな柱としています。下請企業の経営者が押さえておくべきポイントは以下の通りです。

通報制度の整備

元請業者から不当に低い労務費を押し付けられた場合、国土交通大臣または都道府県知事に対して違反事実を通報することができます。改正建設業法第19条の7では、通報を理由とする不利益取扱いを明確に禁止しています。

通報は匿名でも可能です。建設Gメンへの情報提供は、電話・メール・書面のいずれでも受け付けており、通報者の情報は保護されます。

⚠ 元刑事の視点:通報前に知っておくべき現実

法律上の保護があっても、建設業界は関係者が限定される「村社会」的構造を持ちます。現場状況や見積り内容から通報者が推定されるリスクはゼロではありません。通報は最終手段と位置づけ、実行前に以下を準備してください。

  • 新たな元請・取引先の開拓(1社依存からの脱却)
  • 通報内容を裏付ける客観的証拠(契約書、見積書、メール等)の保全
  • 行政書士・弁護士への事前相談による法的リスクの整理

下請も規制対象であることの理解

見落とされがちですが、下請企業自身も規制の対象です。受注獲得のために標準労務費を著しく下回る金額で見積りを提出する「不当廉売」は禁止されています。「安くしないと仕事がもらえない」という業界の慣行は、改正法のもとでは下請側にもリスクをもたらします。

見積書の適正化

下請企業は、見積書に労務費を内訳として適切に記載する必要があります。一式見積りではなく、材料費・労務費・経費を区分した見積書を作成することで、標準労務費との整合性を説明できるようになります。

元刑事の視点

捜査二課で経済事犯を担当した経験から言えば、「やられた側」だけでなく「やった側」の証拠が揃って初めて事件になります。改正建設業法も同じ構造です。元請の買い叩きだけでなく、下請の不当廉売も規制対象にしたのは、「加害者と被害者」という単純な図式ではなく、業界全体の構造を変えるという行政の強い意志の表れです。下請企業も「自分は被害者だから大丈夫」とは言えなくなりました。

勧告を受けないための事前チェックポイント

建設Gメンの検査で指摘を受けないために、今すぐ確認すべき項目をまとめます。

契約・見積り関連

チェック項目確認内容
見積書の労務費記載労務費が内訳として適切に記載されているか(一式表記になっていないか)
標準労務費との整合性契約金額に含まれる労務費が標準労務費を著しく下回っていないか
下請契約書の記載事項建設業法第19条に定める14項目が全て記載されているか
見積依頼から回答までの期間法定の見積期間が確保されているか
原価割れの有無材料費+労務費+経費の総原価を下回る契約がないか

施工体制関連

チェック項目確認内容
施工体制台帳下請負人の情報、技術者の配置状況が最新か
施工体系図下請構造が正確に反映されているか、現場に掲示されているか
主任技術者・監理技術者適切な資格を持つ技術者が配置されているか
社会保険加入健康保険・厚生年金・雇用保険の加入が完了しているか

書類保管関連

契約書、見積書、見積依頼書、注文書、請書、下請代金の支払記録は、原則として引渡しから5年間の保管が必要です(建設業法施行規則第26条)。建設Gメンの検査では過去の書類を遡って確認されるため、日頃からの整理・保管体制が不可欠です。

もし勧告・指導を受けたら

建設Gメンの検査の結果、勧告や文書指導を受けた場合、放置は絶対にNGです。建設業法に基づく処分は段階的にエスカレートします。

段階処分内容根拠条文令和6年度実績
第1段階勧告・文書指導行政指導649業者
第2段階指示処分建設業法第28条18件
第3段階営業停止処分建設業法第29条16件
第4段階許可取消処分建設業法第29条

最初の段階である勧告・文書指導の時点で速やかに改善計画を策定し、誠実に対応することが、処分のエスカレートを防ぐ最善の方法です。令和6年度の実績でも、勧告・文書指導等649業者に対して指示処分は18件にとどまっており、初期段階での対応が功を奏しているケースが大半です。

勧告・指導を受けた場合の具体的な対処法については、建設業で行政指導・勧告を受けたときの対処法|放置が許可取消しにつながる理由で詳しく解説しています。

元刑事の視点

刑事事件でも行政処分でも、「初動対応」が結果を決定的に左右します。勧告を受けた段階で専門家に相談し、改善報告書を適切に作成・提出すれば、指示処分や営業停止に至るリスクは大幅に低減できます。逆に、勧告を「ただの注意」と軽視して放置すると、行政は「改善の意思なし」と判断します。捜査二課時代、「最初にきちんと対応していれば、ここまで大事にならなかった」という案件を何度も見てきました。

まとめ:改正建設業法の全面施行を受けて今やるべきこと

改正建設業法は令和7年(2025年)12月12日に全面施行されました。すでに規制は始まっています。建設業者が早急に着手すべきことを整理します。

1. 見積書・契約書の点検:労務費が内訳として適切に記載されているか、標準労務費との整合性を確認する。

2. 原価計算の精緻化:材料費・労務費・経費を正確に算出し、原価割れの有無を把握する。

⚠ 経営者への警告:「知らずに法律違反」のリスク

中小・零細の下請企業の多くは、現場管理費や一般管理費を工事ごとに正確に配賦する原価計算システムを持っていません。いわゆる「どんぶり勘定」のまま受注を続けると、自社では適正価格のつもりでも、標準労務費の基準に照らせば「原価割れ」と判定されるリスクがあります。まずは自社の原価管理体制を早急に見直し、工事ごとの原価を「見える化」することが急務です。

3. 施工体制の整備:施工体制台帳・施工体系図を最新の状態に更新し、技術者配置を適正化する。

4. 書類保管体制の構築:契約書、見積書、注文書等を体系的に整理し、検査時にすぐ提出できる状態にする。

5. 社内教育の実施:営業担当者や現場担当者に改正法の内容を周知し、コンプライアンス意識を高める。

元大阪府警捜査二課刑事・特定行政書士として、行政の指導・処分からあなたの事業を守ります。

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田原 靖弘

この記事の著者

田原 靖弘

特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

大阪府警で18年間、捜査二課で詐欺・横領・企業犯罪の捜査に従事。退職後は会社役員として経営にも参画。 現在は特定行政書士として、企業の危機管理・外国人雇用支援・医療法人設立支援を行っている。

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