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建設業許可#建設業許可#建設業法改正 2025#経営事項審査 不正#建設業 許可取消し#一人親方 建設業許可

建設業法改正2025年12月施行|元刑事が教える許可取得と不正防止の実務

公開: 2026/3/14
田原 靖弘
12 min read

建設業法改正(2025年12月施行)とは、建設業の担い手確保のため、著しく低い労務費での見積りの禁止、原価割れ契約の禁止、工期ダンピング対策の強化等を定めた法改正である。本記事では、許可取得の実務ポイントと不正防止策を元捜査二課刑事の視点で解説する。

💡この記事の要点 / Key Takeaways

2025年12月12日全面施行の改正建設業法で、労務費に関する基準の勧告制度・原価割れ契約の禁止・ICT活用の技術者兼任が導入。元大阪府警捜査二課刑事が、建設業許可の4許可要件+欠格要件から、虚偽申請・経審不正・下請けいじめの実態と許可取消しリスクまで、「不正のトライアングル」理論で徹底解説。中小建設業者・一人親方の許可取得と法令遵守を支援します。

田原 靖弘
✍ この記事の執筆者

田原 靖弘特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

捜査二課で建設業に関わる不正事案も経験。行政書士として建設業許可の申請・維持管理を支援しています。

2025年12月12日、改正建設業法が全面施行されました。

労務費に関する基準(通称:標準労務費)の勧告制度、原価割れ契約の禁止——建設業界の「暗黙のルール」にメスが入った歴史的な改正です。

元大阪府警捜査二課刑事として詐欺・横領・文書偽造の捜査に携わり、現在は特定行政書士として許認可業務に従事する立場から、建設業許可の取得要件と、建設業界に潜む不正リスクの両面を解説します。

2025年12月施行|建設業法改正の3つのポイント

2024年6月に国会で成立した改正建設業法は、2024年9月・12月と段階的に施行され、2025年12月12日に全面施行を迎えました。

この改正は「第三次・担い手3法」と呼ばれ、建設業の持続可能性を確保するための抜本的な制度改革です。押さえるべきポイントは3つあります。

① 労務費に関する基準の勧告制度の創設

中央建設業審議会が工種ごとに「労務費に関する基準」(通称:標準労務費)を作成・勧告する制度が新設されました。

これまで建設業界では、元請が下請に対して労務費を不当に圧縮する「叩き」が横行していました。改正後は、見積書や契約において適正な労務費を確保するためのルールが強化されました。見積書記載額や通常必要と認められる原価を著しく下回る金額での契約締結・変更要求が規制対象となります。

元刑事の視点

「適正な労務費」が数値で示されたことで、不当な値引き要求が客観的に「違法」と判断できるようになりました。これは刑事捜査でいう「証拠の基準が明確化された」のと同じ意味を持ちます。曖昧だったルールが数値化されれば、不正の言い逃れは難しくなります。

② 原価割れ契約の禁止(受注者側にも規制拡大)

従来の建設業法では、元請(発注者側)による不当な値引き要求のみが規制対象でした。

改正後は、受注者(元請負人・下請負人)が「仕事を取りたいから」と自ら原価割れの金額で契約を結ぶことも禁止されました。正当な理由なく通常必要とされる原価に満たない金額での受注は、行政処分の対象となります。

③ ICT活用による技術者兼任の容認

深刻な人手不足に対応するため、ICTを活用した遠隔管理により、一定の要件の下で主任技術者・監理技術者等の兼任が認められるようになりました。ただし無条件ではなく、2現場以下・請負金額1億円未満(建築一式は2億円未満)・概ね2時間以内での巡回が可能であること等の条件が付されています。

限られた技術者を効率的に配置できる反面、「名義貸し」や「常勤偽装」といった不正の温床にもなりかねません。適正な運用が求められます。

建設業許可の基本——許可が必要な工事とは

建設業を営むには、原則として建設業許可が必要です。ただし、以下の「軽微な建設工事」のみを行う場合は許可不要です。

許可が不要な「軽微な建設工事」

  • 建築一式工事:請負金額が1,500万円未満(税込)、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
  • 建築一式以外の工事:請負金額が500万円未満(税込)の工事

※これらを超える工事を無許可で請け負うと、建設業法違反(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)となります。

知事許可と大臣許可の違い

  • 知事許可:1つの都道府県にのみ営業所がある場合(手数料:9万円)
  • 大臣許可:2つ以上の都道府県に営業所がある場合(登録免許税:15万円)

「営業所」とは、契約の締結を行う事務所のことです。工事現場が他県にあっても、契約を結ぶ営業所が1つの都道府県内であれば知事許可で問題ありません。

一般建設業と特定建設業の違い

  • 一般建設業許可:下請に出す工事の合計金額が5,000万円未満(建築一式は8,000万円未満)の場合
  • 特定建設業許可:元請として下請に出す工事の合計金額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)の場合

特定建設業許可は、下請業者の保護を目的としており、財産的基礎などの要件が一般より厳しく設定されています。

建設業許可の主要5項目(4許可要件+欠格要件)

建設業許可を取得するためには、以下の4つの許可要件と欠格要件の全てを満たす必要があります。

要件① 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力

法人の場合は常勤の役員のうち1人が、個人の場合は本人または支配人が、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 許可を受けようとする建設業に関し5年以上の経営経験があること
  • 許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し5年以上の経営経験があること
  • 経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、6年以上の経営補佐経験があること
  • 常勤役員等を直接に補佐する者(財務管理・労務管理・業務運営の経験者)を置く体制を整備すること

※上記に加え、社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)への適切な加入も許可実務上の重要な確認事項です。

要件② 営業所技術者等(従来の専任技術者)の配置

営業所ごとに、その業種に応じた資格または実務経験を持つ営業所技術者等(従来の「専任技術者」)を常勤で配置する必要があります。

  • 国家資格(1級・2級施工管理技士等)の保有者
  • 大学の指定学科卒業後3年以上、高校の指定学科卒業後5年以上の実務経験者
  • 学歴不問で10年以上の実務経験者

要件③ 財産的基礎

一般建設業の場合、以下のいずれかを満たすことが必要です。

  • 自己資本が500万円以上あること
  • 500万円以上の資金調達能力があること(金融機関の残高証明書等で証明)
  • 許可申請の直前過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること

特定建設業の場合は、資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上などのより厳しい要件が課されます。

要件④ 誠実性

法人の場合は当該法人・役員等・政令で定める使用人が、個人の場合は本人・政令で定める使用人が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが求められます。過去に建築士法・宅地建物取引業法等で不正・不誠実を理由とする処分歴がある場合は、重要な不利益事情となり得ます(個別事情による評価が行われます)。

要件⑤ 欠格要件に該当しないこと

以下に該当する場合は許可を受けることができません。

  • 許可の取消しから5年を経過していない者
  • 拘禁刑以上の刑の執行終了から5年を経過していない者
  • 建設業法、暴対法等の特定の法律に違反して罰金刑を受け、5年を経過していない者
  • 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者
  • 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者

元刑事が見てきた建設業の不正と許可取消し

ここからが、この記事の核心です。

私は大阪府警捜査二課で、詐欺・横領・背任・文書偽造といった知能犯の捜査に携わってきました。建設業界の事件を専門に担当していたわけではありませんが、知能犯の手口と動機のパターンは、業界を問わず驚くほど共通しています。

建設業許可の申請や経営事項審査で発生する不正は、まさに私が捜査してきた犯罪類型そのものです。

虚偽申請の典型パターン

建設業許可の申請において、最も多い不正は虚偽申請です。具体的には以下のパターンがあります。

よくある虚偽申請のパターン

  • 経歴の詐称:経営業務管理責任者の経験年数を水増しする。実際には3年の経験しかないのに5年以上と偽る
  • 常勤の偽装:専任技術者が実際には他社に勤務しているのに、常勤であると偽る。いわゆる「名義貸し」
  • 決算書の偽造:財産的基礎の500万円要件を満たすため、決算書の数字を改ざんする。残高証明書の偽造もある
  • 実務経験の捏造:専任技術者の実務経験を証明する工事経歴を架空で作成する

元刑事の視点

文書偽造事件の捜査で繰り返し見てきたのは、「最初は小さな嘘だった」という供述です。経歴を少しだけ盛る、数字を少しだけ修正する——その「少し」が、建設業法上の虚偽申請として罰則・監督処分の対象となり得ます。さらに、内容や態様によっては刑法上の文書偽造罪に問われる可能性もあります。「バレなければ大丈夫」という考えは、犯罪者の共通した心理です。

経営事項審査(経審)の不正

公共工事を受注するために必須の経営事項審査(経審)は、点数が入札ランクに直結するため、不正の温床となりやすい制度です。

  • 完成工事高の水増し:実際の工事金額を過大に申告する。架空の工事を計上するケースもある
  • 技術者の二重登録:1人の技術者を複数の業種や営業所に重複して登録する
  • 財務諸表の粉飾:利益や自己資本を実態より良く見せるために会計処理を操作する
  • 社会保険加入の偽装:加点項目である社会保険の加入を偽る

経審の不正が発覚した場合、違反の態様に応じて営業停止処分が科されます。国土交通省の監督処分基準では、違反類型により3日〜45日以上の幅があり、公共工事の資格審査に用いた場合や財務諸表の虚偽を伴う場合はより重い処分となります。営業停止期間中は新規の請負契約を締結できず、各発注者の規程に基づき入札参加資格の停止・取消しにつながり得ます。

下請けいじめと水増し請求

建設業界特有の多層下請構造は、不正の連鎖を生みやすい構造です。

  • 元請が下請に対して一方的に代金を減額する(いわゆる「指値」「値切り」)
  • 追加工事を発注しておきながら追加代金を支払わない
  • 下請が元請に対して実際の施工量より多い水増し請求を行う
  • 架空の外注費を計上して裏金を作る

2025年12月の法改正で原価割れ契約が禁止されたことは、この問題に対する制度的な歯止めとなります。しかし、制度が変わっても人の意識が変わらなければ、不正は形を変えて続きます。

許可取消しの実際の処分内容

許可取消し・営業停止の主な影響

  • 許可取消し:取消しから5年間は建設業許可を再取得できない
  • 営業停止:処分期間中(30日〜)は新規の請負契約を締結できない
  • 指名停止:公共工事の入札に参加できなくなる
  • 刑事罰:虚偽申請には6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、無許可営業には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
  • 社会的信用の喪失:国土交通省のネガティブ情報等検索システムで処分履歴が公開される

「不正のトライアングル」は建設業でも同じ

犯罪学者ドナルド・R・クレッシーが提唱した「不正のトライアングル」という理論があります。不正は、3つの要素が揃った時に発生するという理論です。

  • 動機(Pressure):「受注競争に勝たなければ会社が潰れる」「公共工事のランクを上げたい」——経営上のプレッシャーが動機となる
  • 機会(Opportunity):「自分しか経理を見ていない」「チェックする人がいない」——管理体制の甘さが機会を与える
  • 正当化(Rationalization):「業界ではみんなやっている」「一時的なことだ」「会社を守るためだ」——自分を納得させる言い訳を作る

元刑事の視点

捜査二課で取り調べた横領犯・背任犯のほぼ全員が、この3要素を揃えていました。「悪いことだとわかっていた。でもやるしかなかった」——その供述は建設業でも製造業でも金融業でも同じです。不正を防ぐには、この3要素のうち少なくとも1つを潰すこと。特に「機会」を減らすこと(チェック体制の整備)が最も効果的です。

不正は「悪人がやる」のではなく、「普通の人が、追い詰められた時にやる」。だからこそ、仕組みで防ぐ必要があります。

建設業許可申請の手続きの流れ

建設業許可の申請は、以下の流れで進みます。

1

要件の確認

許可要件を満たしているか確認します。特に経営業務管理責任者と専任技術者の要件は、証明書類の準備に時間がかかるため、早めに確認が必要です。

2

必要書類の収集

登記事項証明書、納税証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書、決算書(必要年数は申請類型により異なります)、工事経歴書、資格証明書など、多数の書類を収集します。

3

申請書類の作成

建設業許可申請書、営業の沿革、役員等の一覧表、財務諸表など、定められた様式に従って申請書類を作成します。記載ミスや不備があると補正を求められ、手続きが長引きます。

4

申請の提出

知事許可の場合は都道府県の窓口(大阪府の場合は大阪府都市整備部住宅建築局建築指導室建築振興課 建設業許可グループ(咲洲庁舎1階申請会場))、大臣許可の場合は地方整備局に提出します。手数料は知事許可9万円、大臣許可15万円です。

5

審査・許可

知事許可は約30〜45日、大臣許可は約2〜4か月で審査が完了します。審査の過程で追加書類の提出を求められることがあります。許可が下りると許可通知書が交付されます。

許可後に必要な手続き

  • 毎年:決算変届(事業年度終了届)の提出(決算日から4か月以内)
  • 5年ごと:許可の更新申請(有効期間満了の30日前までに申請)
  • 変更時:役員・所在地・専任技術者等の変更届の提出(変更後2週間〜30日以内)

行政書士に依頼すべき理由——田原事務所の強み

建設業許可の申請は自分でもできます。しかし、書類の種類が多く、要件の判断も複雑です。特に経営業務管理責任者と専任技術者の経験年数の立証は、過去の契約書や注文書を遡って収集する必要があり、大きな手間がかかります。

行政書士に依頼するメリットは、手続きの代行だけではありません。

田原行政書士事務所に依頼する3つのメリット

  • 元捜査二課刑事によるコンプライアンス確認:許可申請の内容に虚偽や矛盾がないか、提出前に徹底的に確認します。「知らなかった」では済まない虚偽申請のリスクを未然に防ぎます
  • 不正防止体制の構築支援:許可を取得した後も、経審の不正や下請取引の法令違反が起きない仕組みづくりをサポートします。「取って終わり」ではなく「守り続ける」ことが重要です
  • 特定行政書士として不服申立てにも対応:万が一、許可申請が不許可となった場合や行政処分を受けた場合、特定行政書士として行政庁に対する不服申立ての代理が可能です

元刑事の視点

建設業許可の申請書類は「正確であること」が当然の前提です。しかし、意図せず不正確な記載をしてしまうケースは少なくありません。過去の工事経歴の記憶違い、前任者が作った書類の引き継ぎミス——それが「虚偽申請」と判断されれば、許可取消しと刑事罰が待っています。だからこそ、申請前の段階で専門家のチェックを受けることに意味があるのです。

まとめ——建設業許可は「取ること」より「守ること」が難しい

建設業許可の取得は、事業拡大のスタートラインです。しかし、本当に難しいのは許可を取った後です。

毎年の決算変更届の提出、5年ごとの更新、役員変更の届出——届出の未対応が直ちに自動失効とはなりませんが、監督処分や許可取消しのリスクにつながります。特に更新申請を怠れば有効期間満了で許可は失効します。経審の不正に手を染めれば営業停止。虚偽申請が発覚すれば許可取消しと刑事罰。

2025年12月の法改正により、建設業界のルールは大きく変わりました。労務費に関する基準の導入、原価割れ契約の禁止——これらは「適正に経営している会社」にとっては追い風です。正しく制度を理解し、正しく運用する会社が、正当に評価される時代が来ています。

「近道」に見える不正は、必ず「遠回り」になる。正しい手続きこそが、最も確実な事業の基盤です。

建設業許可の取得・更新、経審対策、法改正への対応について、元捜査二課刑事・特定行政書士の視点でサポートいたします。お気軽にご相談ください。

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田原 靖弘

この記事の著者

田原 靖弘

特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

大阪府警で18年間、捜査二課で詐欺・横領・企業犯罪の捜査に従事。退職後は会社役員として経営にも参画。 現在は特定行政書士として、企業の危機管理・外国人雇用支援・医療法人設立支援を行っている。

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