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刑事告訴のやり方|元刑事が解説する告訴状の書き方と手続きの流れ

2026/3/3
田原 靖弘
8 min read

💡この記事の要点 / Key Takeaways

刑事告訴は犯罪被害者が加害者の処罰を求める強力な法的手段です。元刑事が、被害届との違い、告訴状に書くべき5つの必須要素、警察・検察への提出手順、受理されない3つの理由と対策を、捜査実務の経験に基づいて徹底解説します。

「犯罪被害に遭ったのに、警察に相談しても被害届を出すだけで終わってしまった」「告訴状を出したいが、書き方がわからない」――そんなお悩みを抱えていませんか?

刑事告訴は、犯罪被害者が加害者の処罰を求めるための極めて重要な法的手段です。しかし、告訴状の書き方や手続きの流れを正しく理解していないと、せっかく作成した告訴状が受理されず、泣き寝入りせざるを得ないケースも少なくありません。

この記事では、元刑事として数多くの告訴・告発事件の捜査に携わった行政書士が、刑事告訴の正しいやり方告訴状の書き方のポイント、そして受理されるためのコツを、実務経験に基づいて徹底解説します。

刑事告訴とは?被害届との違い

まず、多くの方が混同しがちな「刑事告訴」と「被害届」の違いを明確にしておきましょう。この違いを正確に理解することが、適切な法的対応の第一歩です。

被害届とは

被害届とは、犯罪の被害に遭った事実を警察に届け出る書類です。「こういう被害がありました」という事実の報告にすぎず、法的には、警察に捜査義務を生じさせるものではありません。つまり、被害届を出しても、警察が必ず捜査に着手するとは限らないのです。

刑事告訴とは

一方、刑事告訴とは、犯罪被害者(またはその法定代理人等)が、捜査機関(警察・検察)に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。刑事訴訟法第230条に基づく法的行為であり、告訴が受理された場合、捜査機関には捜査義務が生じます。

被害届と刑事告訴の決定的な違い

被害届

  • 犯罪被害の事実報告
  • 捜査義務は生じない
  • 処罰を求める意思表示ではない

刑事告訴

  • 犯罪事実の申告+処罰要求
  • 受理されれば捜査義務が発生
  • 不起訴の場合、通知を受ける権利あり

告訴と告発の違い

なお、「告発」は告訴と似ていますが、告発は被害者以外の第三者が犯罪事実を申告するものです(刑事訴訟法第239条)。例えば、会社の内部不正を目撃した従業員が行う場合などが該当します。告訴は被害者本人(またはその法定代理人など法律で認められた者)だけが行える点が、告発との大きな違いです。

元刑事の経験から申し上げると、被害届を出すだけでは、事件が「相談案件」として処理され、本格的な捜査に至らないケースが少なくありません。本気で犯人の処罰を求めるのであれば、刑事告訴という法的手段を選択すべきです。

告訴状に書くべき5つの必須要素

告訴状には法律で定められた厳格な書式があるわけではありませんが、受理されるためには、以下の5つの要素を過不足なく記載する必要があります。一つでも欠けていると、受理を断られる原因となります。

1

告訴人の特定情報

告訴人(被害者)の氏名、住所、連絡先、被告訴人(加害者)との関係を明記します。法人が告訴する場合は、法人名、所在地、代表者名を記載します。

2

被告訴人の特定情報

犯人(被告訴人)の氏名、住所、勤務先などを可能な限り記載します。犯人が不明の場合は「氏名不詳者」として告訴することも可能ですが、捜査の端緒となる情報(犯行日時・場所・特徴など)は詳細に記載する必要があります。

3

犯罪事実(告訴事実)

これが告訴状の核心部分です。「いつ」「どこで」「誰が」「誰に対して」「何を」「どのように」行ったのかを、5W1Hに基づいて具体的かつ正確に記載します。曖昧な表現や感情的な記述は避け、客観的な事実のみを淡々と記述することが重要です。

また、その行為がどの法律の何条に該当する犯罪であるか(罪名と適用法条)も明記します。例えば、「刑法第253条(業務上横領罪)」「刑法第246条(詐欺罪)」といった形です。

4

告訴に至る経緯

犯罪被害が発覚した経緯、発覚後の対応(社内調査の実施、本人への聴取など)、そして告訴に至った動機を時系列で記載します。なぜ被害届ではなく告訴という手段を選んだのか、その理由を明確にすることで、告訴の正当性と被害者の強い処罰意思を示すことができます。

5

証拠資料の一覧と添付

告訴事実を裏付ける証拠資料を一覧にまとめ、告訴状に添付します。証拠が多ければ多いほど、受理の可能性は高まります。具体的には以下のようなものが考えられます。

  • 契約書、請求書、領収書などの取引書類
  • 銀行の取引明細、送金記録
  • メール、LINE、SMSなどのやり取りの記録
  • 防犯カメラの映像、写真
  • 目撃者の陳述書
  • 被害額の算定根拠資料
元刑事としての助言:告訴状は「捜査員が読んで、すぐに事件の全体像を把握できる」レベルの完成度を目指してください。捜査員は日々大量の案件を抱えています。読みにくい告訴状は、それだけで後回しにされるリスクがあります。

告訴状を提出する手順(警察署 or 検察庁)

告訴状が完成したら、いよいよ捜査機関への提出です。提出先は大きく分けて2つあります。それぞれの特徴と、実務上のポイントを解説します。

提出先1:警察署

最も一般的な提出先です。原則として、犯罪が行われた場所(犯罪地)を管轄する警察署に提出します。被害者の住所地を管轄する警察署でも受け付けてもらえる場合がありますが、犯罪地の管轄署の方がスムーズに進むことが多いです。

手順1:事前相談 いきなり告訴状を持参するのではなく、まず刑事課の担当者に電話で事前相談のアポイントを取ります。事案の概要を説明し、告訴の受理に向けた打ち合わせを行います。
手順2:告訴状の提出 事前相談を経て、完成した告訴状と証拠資料一式を提出します。告訴状の副本(コピー)に受領印をもらっておくことをお勧めします。
手順3:受理の確認 提出後、告訴状が正式に「受理」されたかどうかを確認します。「預かり」と「受理」は法的に全く異なりますので、必ず「受理」されたことを明確にしてもらいましょう。

提出先2:検察庁

告訴状は検察庁に直接提出することもできます。特に、経済犯罪や知能犯罪など、法律的に複雑な事案の場合は、検察庁への提出が効果的な場合があります。検察官は法律の専門家であり、法的構成について、より深い理解を持って対応してもらえる可能性があります。

元刑事の実務アドバイス

実務上は、まず警察署に提出するのが一般的です。理由は、警察には現場の捜査力(捜索・差押え、張り込み、聞き込みなど)があるため、初動捜査がスムーズに進むからです。ただし、警察で受理されなかった場合の次善策として、検察庁への提出を検討するのも有効な戦略です。また、事案の性質によっては最初から検察に提出する方が効率的な場合もあります。

告訴状提出後の流れ

告訴が受理されると、以下のような流れで手続きが進みます。

  • 捜査の開始:捜査機関が証拠の収集、関係者への聴取、必要に応じて逮捕・捜索差押えなどの強制捜査を行います。
  • 検察官への送致:警察が捜査した事件は検察庁に送致(いわゆる「書類送検」)されます。
  • 起訴・不起訴の判断:検察官が起訴するか不起訴にするかを判断します。告訴事件の場合、不起訴の場合はその旨が告訴人に通知されます。
  • 不起訴の場合の対応:不起訴に不服がある場合は、検察審査会への審査申立てが可能です。

告訴状が受理されない3つの理由と対策

実は、告訴状を提出しても、すぐに受理されるとは限りません。元刑事の経験から、受理を断られる代表的な3つの理由と、それぞれの対策を解説します。

理由1:犯罪事実の記載が曖昧・不十分

「お金を騙し取られた」「裏切られた」といった抽象的・感情的な記述では、具体的にどの法律のどの条文に該当する犯罪なのかが判断できません。捜査機関は「犯罪の構成要件」に照らして事件性を判断するため、構成要件に沿った具体的な事実の記載が不可欠です。

対策

犯罪の構成要件(法律の条文で定められた犯罪成立の条件)を正確に理解し、それに対応する事実を一つひとつ丁寧に記載します。法律の専門知識が必要な部分であり、行政書士などの専門家の関与が特に重要です。

理由2:証拠が不足している

「間違いなくあの人がやった」と確信していても、それを裏付ける客観的な証拠がなければ、捜査機関は動けません。特に、当事者間の「言った・言わない」の水掛け論になるような事案では、客観的証拠の有無が受理の可否を大きく左右します。

対策

告訴状を提出する前に、できる限りの証拠を収集・整理しておきます。メールやLINEのスクリーンショット、振込明細、契約書、防犯カメラの映像、録音データなど、犯罪事実を裏付ける証拠は多ければ多いほど有利です。証拠の収集方法についても、専門家に相談することをお勧めします。

理由3:民事上のトラブルと判断される

これが最も多い不受理理由です。「お金を貸したのに返してもらえない」「契約どおりにサービスを提供してもらえない」といった案件は、一見すると被害に見えますが、法的には「民事上の債務不履行」であり、刑事事件ではないと判断されがちです。

対策

民事と刑事の境界線を明確にする記述が求められます。例えば、単なる「借金の踏み倒し」ではなく、「最初から返済する意思がないのに、あたかも返済するかのように装って金銭を騙し取った(=詐欺罪)」という犯罪の構成要件を満たす事実を立証する必要があります。この「不法領得の意思」や「欺罔行為(人を騙す行為)」の立証が、受理の鍵となります。

私が刑事時代に見てきた告訴状の中で、受理に至らなかったものの大半は、上記3つのいずれか、あるいは複数に該当していました。逆に言えば、この3つのポイントをしっかり押さえた告訴状は、受理される可能性が格段に高まるのです。

行政書士に告訴状作成を依頼するメリット

告訴状は、被害者ご自身で作成して提出することも法律上は可能です。しかし、上述のとおり、受理されるレベルの告訴状を作成するには、法律の専門知識と捜査実務への理解が不可欠です。ここでは、行政書士に告訴状作成を依頼するメリットをお伝えします。

1. 法的に正確な告訴状の作成

行政書士は「権利義務に関する書類」の作成を専門とする国家資格者です。犯罪の構成要件に沿った正確な事実記載、適用法条の選定、証拠の整理と体系化を、法的知識に基づいて行うことができます。

2. 受理率の向上

専門家が作成した告訴状は、捜査機関にとって「読みやすく」「事件性が判断しやすい」ものになります。結果として、受理される可能性が大きく向上します。捜査員の視点を理解した書類作成が可能な点は、専門家に依頼する最大のメリットです。

3. 精神的負担の軽減

犯罪被害に遭われた方は、精神的に大きなダメージを受けています。その状態で、複雑な法律用語を調べながら告訴状を作成するのは、想像以上に大きな負担です。専門家に任せることで、被害者の方は心身の回復に専念することができます。

4. 捜査機関への追加資料提出のサポート

告訴状の提出は、書類を出して終わりではありません。提出後に捜査機関から追加資料の提出を求められた場合の書類作成や、告訴人としての事情聴取に臨む際の事実関係の整理など、専門家のサポートがあれば安心です。

当事務所の強み:元刑事×行政書士の二刀流

当事務所の代表・田原靖弘は、元刑事として長年にわたり犯罪捜査の第一線に立ってきました。告訴状を「受け取る側」の経験があるからこそ、「捜査機関がどのような告訴状なら受理しやすいか」を熟知しています。

さらに、特定行政書士としての法務知識を併せ持つことで、告訴状の作成から、提出後に必要となる追加書類の作成まで、一貫したサポートを提供いたします。犯罪被害でお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

刑事告訴は、犯罪被害者が加害者の処罰を求めるための強力な法的手段です。しかし、その効力を発揮するためには、告訴状の「質」が決定的に重要です。

  • 被害届と告訴の違いを正しく理解し、目的に応じた手段を選ぶこと
  • 5つの必須要素を漏れなく記載し、証拠を体系的に整理すること
  • 民事と刑事の区別を明確にし、犯罪の構成要件に沿った記述をすること
  • 受理されない3つの理由を事前に把握し、対策を講じること

事件は千差万別であり、最適な対処法も事案ごとに異なります。一人で抱え込まず、早い段階で専門家にご相談いただくことが、問題解決への最短ルートです。

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田原 靖弘

この記事の著者

田原 靖弘

特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

大阪府警で知能犯捜査のスペシャリストとして企業不正・横領・詐欺事件を担当。 現在は行政書士として、その捜査経験を活かした危機管理・企業防衛・国際業務を提供しています。

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