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医療法人設立の完全ガイド|費用・期間・手順を行政書士が解説

2026/3/3
田原 靖弘
10 min read

💡この記事の要点 / Key Takeaways

医療法人設立のメリット・デメリット、費用の内訳(80万〜150万円)、8つの具体的手順、都道府県別の申請スケジュールを徹底解説。医療系予備校取締役も兼任する行政書士が、先生方の法人化を全力でサポートします。

「個人クリニックの経営が軌道に乗ってきたから、そろそろ医療法人化を検討したい」「医療法人を設立すると節税になると聞いたけれど、実際のところどうなの?」――開業医の先生方から、こうしたご相談をいただく機会が増えています。

医療法人の設立は、税制上のメリットや事業拡大の可能性など、多くの利点がある一方で、手続きが複雑で、費用も期間もかかります。さらに、都道府県によって申請スケジュールや求められる書類が異なるため、事前の情報収集と計画的な準備が不可欠です。

この記事では、医療法人設立に必要な費用の内訳具体的な手順、そして都道府県別の注意点まで、行政書士の立場から徹底解説します。医療系予備校の取締役としても医療業界に深く関わる当事務所ならではの視点で、先生方の法人設立を全力でサポートいたします。

医療法人とは?設立のメリット・デメリット

医療法人とは、医療法に基づいて設立される法人で、病院、診療所、介護老人保健施設などを開設・運営することを目的としています。個人開業医が法人化することで、さまざまなメリットが得られますが、同時にデメリットも存在します。まずは、両面をしっかりと理解しましょう。

医療法人設立の主なメリット

節税効果:個人事業では累進課税により最高税率55%(所得税45%+住民税10%)が適用されますが、法人税の実効税率は約23〜34%程度です。所得が一定額を超えると、法人化した方が税負担を大幅に軽減できます。
事業の拡大・分院展開:個人では原則として1つの診療所しか開設できませんが、医療法人であれば複数の診療所(分院)を開設できます。事業拡大の自由度が格段に上がります。
事業承継の円滑化:個人事業の場合、院長の死亡により診療所の開設許可が消滅しますが、法人であれば理事長の交代手続きにより事業を継続できます。後継者への円滑な事業承継が可能です。
社会的信用力の向上:法人化することで、金融機関からの融資、医療機器メーカーとの取引、スタッフの採用など、あらゆる面で社会的信用力が向上します。
役員報酬による所得分散:ご家族を役員にすることで、所得を分散し、世帯全体の税負担を軽減できます。退職金の支給も可能になります。

医療法人設立のデメリット・注意点

設立・運営コストの増加:設立時の諸費用に加え、法人住民税の均等割(赤字でも発生)、顧問税理士費用、社会保険料の事業主負担などのランニングコストが増加します。
事務手続きの負担増:毎年の決算届出、資産総額の変更登記、役員変更届など、法人として求められる事務手続きが大幅に増えます。
配当禁止・残余財産の帰属制限:医療法人(持分なし)は、出資者への配当が禁止されています。また、法人を解散した場合の残余財産は、国・地方公共団体等に帰属するため、個人資産として回収できません。
都道府県知事の監督:医療法人は都道府県知事の監督下に置かれ、定款変更や重要事項の決定には認可が必要です。個人事業のような自由な経営判断が制限される場面があります。

法人化の判断基準

一般的に、個人の事業所得(経費控除後)が年間1,800万円を超えるようであれば、法人化の節税メリットが明確になると言われています。ただし、税制面だけでなく、将来の事業計画(分院展開、事業承継)も含めた総合的な判断が必要です。税理士と行政書士の双方に相談されることをお勧めします。

医療法人設立に必要な費用の内訳

医療法人の設立には、さまざまな費用がかかります。事前に全体像を把握しておくことで、資金計画を立てやすくなります。以下に、主な費用項目とその目安をまとめます。

医療法人設立にかかる主な費用

1. 行政書士への報酬(設立認可申請の代行)

医療法人設立の認可申請書類一式の作成・提出代行費用です。事案の複雑さにもよりますが、一般的に50万円〜100万円程度が相場です。分院の同時開設や複雑な組織構成の場合は、これを上回ることもあります。

2. 司法書士への報酬(設立登記)

認可後の法務局への法人設立登記手続きの費用です。10万円〜20万円程度が一般的です。

3. 登録免許税

医療法人の設立登記自体には登録免許税はかかりません(非課税)。ただし、設立後に毎年行う必要がある資産総額の変更登記には登記1件あたり数万円の登録免許税が必要です。

4. 拠出金(基金)

医療法人の運営資金として拠出する基金です。都道府県により指導基準が異なりますが、一般的に2か月分程度の運転資金に相当する金額が求められます。これは法人の運営資金として法人に帰属するもので、個人から法人への「持ち出し」ではなく、基金拠出型の場合は将来的に返還を受けることが可能です。

5. その他の費用

定款の認証費用、印鑑作成費用、各種届出に関する費用など、数万円〜10万円程度の諸費用がかかります。

合計すると、専門家への報酬と諸経費でおおよそ80万円〜150万円程度が設立にかかる費用の目安です。これに加えて、拠出金(基金)として運転資金相当額が必要となります。事前に税理士と連携して、設立初年度の資金計画を綿密に立てておくことが重要です。

医療法人設立の具体的な手順(8ステップ)

医療法人の設立は、都道府県知事の認可を得る必要があるため、一般的な株式会社の設立とは大きく異なります。以下に、設立までの8つのステップを順に解説します。

1

事前準備・現状分析

まず、法人化の目的を明確にし、現在のクリニックの経営状況(売上、経費、資産、負債)を整理します。法人化のメリットが本当にあるのか、税理士や行政書士と一緒に検討する段階です。役員(理事3名以上、監事1名以上)の候補者も、この段階で検討しておきます。

2

都道府県への事前相談

設立認可の申請先は、主たる事務所の所在地の都道府県です。事前に担当課(医療政策課、医事課など)に相談し、申請スケジュール、必要書類、指導基準などを確認します。この事前相談は必須と考えてください。都道府県によって求められる書類や基準が異なるためです。

3

定款の作成

法人の基本ルールを定めた「定款」を作成します。法人の名称、目的、主たる事務所の所在地、役員に関する事項、資産および会計に関する事項などを記載します。都道府県が提供する定款のモデルに沿って作成するのが一般的ですが、法人の実情に合わせたカスタマイズが必要です。

4

設立総会の開催

設立時社員(出資者)による設立総会を開催し、定款の承認、役員の選任、事業計画および収支予算の承認などを行います。議事録を作成し、出席者全員の署名・押印を得ます。

5

設立認可申請書の提出

都道府県が定める受付期間内に、設立認可申請書と添付書類一式を提出します。主な添付書類には、定款、設立総会議事録、役員就任承諾書、財産目録、事業計画書、収支予算書、不動産の賃貸借契約書、各役員の履歴書・印鑑証明書などがあります。

6

都道府県による審査・医療審議会への諮問

申請書類を基に、都道府県が審査を行います。書類の補正指示が出ることも多いため、迅速に対応する準備が必要です。審査を通過すると、都道府県の医療審議会に諮問され、審議会での審議・承認を経て、設立認可書が交付されます。

7

法人設立登記

認可書の交付を受けたら、認可日から速やかに(通常2週間以内)法務局に法人設立の登記申請を行います。この登記により、医療法人が正式に成立します。登記は司法書士に依頼するのが一般的です。

8

各種届出・診療所の開設許可申請

法人設立登記が完了したら、保健所への診療所開設許可申請(個人診療所の廃止届と法人診療所の開設届)、厚生局への保険医療機関指定申請、税務署への届出、社会保険・労働保険の手続きなどを行います。これらの届出には期限があるものが多いため、漏れなくスケジュール管理を行う必要があります。

都道府県別の申請スケジュールと注意点

医療法人の設立認可は都道府県知事が行うため、申請の受付時期や審査スケジュールは都道府県によって大きく異なります。ここが医療法人設立の最大の注意点と言っても過言ではありません。

申請受付は年に限られた回数のみ

多くの都道府県では、医療法人の設立認可申請の受付を年に1回〜3回程度しか行っていません。例えば、ある都道府県では年2回(春と秋)のみ受け付けているケースがあり、受付時期を逃すと、次回まで半年以上待たなければなりません。

都道府県別スケジュールの例

東京都の場合

年2回の受付(概ね春・秋)。事前相談は受付開始の数か月前から可能。申請から認可まで約4〜5か月。仮申請と本申請の二段階方式を採用。

大阪府の場合

年2回程度の受付。事前相談が重視され、相談段階で書類の方向性を固めていくスタイル。申請から認可まで約4〜6か月。

スケジュール管理の重要性

「思い立ったらすぐに法人化できる」というものではありません。医療法人設立の全体スケジュールとして、事前準備から法人としての診療開始まで、最短でも6か月、余裕を持って1年程度を見込んでおく必要があります。

  • 事前準備期間:1〜3か月(現状分析、事前相談、書類準備)
  • 申請受付〜認可:3〜6か月(審査、医療審議会、補正対応)
  • 認可後の手続き:1〜2か月(登記、各種届出、保険医療機関指定申請)

特に注意すべきポイント

  • 都道府県の受付時期を事前に確認し、逆算してスケジュールを組むこと
  • 保険医療機関の指定申請は、原則として各月1日付のため、診療開始日を逆算して登記のタイミングを調整する必要があること
  • 個人診療所を廃止し、法人診療所を開設する際に、保険診療が途切れないよう「遡及指定」の手続きが必要なこと
  • 診療所の賃貸借契約を個人名義から法人名義に切り替える際の家主との交渉が必要なこと

医療法人設立を行政書士に依頼すべき理由

医療法人の設立認可申請は、膨大な書類の作成と、都道府県との綿密なやり取りが必要です。先生方が本来の診療業務を行いながら、これらの手続きを並行して進めることは、現実的には非常に困難です。

1. 書類作成の専門性

定款、事業計画書、収支予算書、財産目録など、設立認可申請に必要な書類は20種類以上に及びます。これらを都道府県の指導基準に適合する形で正確に作成するには、専門的な知識と経験が不可欠です。

2. 都道府県との折衝

申請後の審査過程では、都道府県から補正指示や追加資料の提出を求められることが頻繁にあります。これらに迅速かつ的確に対応するためには、都道府県の担当者との円滑なコミュニケーションが重要です。

3. スケジュール管理

年に限られた回数しかない受付時期に合わせて、逆算して準備を進める計画性が求められます。行政書士が全体のスケジュールを管理し、期限に遅れることなく手続きを進めます。

4. 関連手続きのワンストップ対応

医療法人設立に伴い、診療所の開設届・廃止届、保健所への届出、厚生局への保険医療機関指定申請など、関連する行政手続きが多岐にわたります。行政書士がこれらの手続きをワンストップで対応することで、先生方の負担を大幅に軽減できます。

当事務所の特徴:医療業界への深い理解

当事務所の代表・田原靖弘は、医療系予備校の取締役も兼任しており、医療業界の事情に精通しています。先生方が本業である診療に集中できるよう、設立認可申請の書類作成から都道府県との折衝、設立後の各種届出まで、「伴走型」のサポートを提供いたします。

また、特定行政書士としての資格を持つため、万が一、認可申請に対して不利益な処分がなされた場合にも、不服申立ての手続きまで一貫して対応することが可能です。医療法人の設立をご検討の先生方は、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

医療法人の設立は、節税効果や事業拡大の可能性など多くのメリットがある一方で、手続きの複雑さと期間の長さが大きなハードルとなります。

  • 法人化のメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の状況に合った判断をすること
  • 設立費用の全体像を把握し、余裕を持った資金計画を立てること
  • 都道府県の申請スケジュールを事前に確認し、逆算して準備を開始すること
  • 専門家(行政書士・税理士・司法書士)と連携し、漏れのない手続きを進めること

医療法人設立は、先生方のクリニック経営における大きな転換点です。その大切な一歩を確実に踏み出すために、当事務所が全力で伴走いたします。

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田原 靖弘

この記事の著者

田原 靖弘

特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

大阪府警で知能犯捜査のスペシャリストとして企業不正・横領・詐欺事件を担当。 現在は行政書士として、その捜査経験を活かした危機管理・企業防衛・国際業務を提供しています。

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