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外国人受け入れ「厳格化時代」に問われる企業の責任|在留資格は誰が支えるべきか

公開: 2026年6月1日
田原 靖弘
10 min read

外国人の受け入れが「秩序ある共生」の時代に入り、在留資格の手続きは企業のコンプライアンスそのものとなった。本記事は、改正行政書士法(2026年1月施行)による「申請取次」と「書類作成」の線引き、登録支援機関と専門職の役割分担を踏まえ、外国人を受け入れる企業が持つべき視点を俯瞰する総論。(行政書士田原靖弘事務所|元大阪府警捜査二課刑事・特定行政書士 田原靖弘 監修)

💡この記事の要点 / Key Takeaways

在留外国人は約395万人を超え、政府は「秩序ある共生」へと舵を切りました。在留資格の手続きは、いまや企業のコンプライアンスそのもの。改正行政書士法による「取次」と「書類作成」の線引き、登録支援機関と専門職の役割分担まで——外国人を受け入れる企業が持つべき視点を、元大阪府警捜査二課刑事・特定行政書士が俯瞰します。

田原 靖弘
✍ この記事の執筆者

田原 靖弘申請取次行政書士 / 元大阪府警刑事

国内で初めて外国人グループによるクレジットカード偽造工場を摘発するなど、外国人犯罪の捜査にも従事。現在は取次行政書士として在留資格の申請取次業務を行っています。

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「外国人の受け入れは、もう"人手不足の穴埋め"の話ではありません。在留資格をどう扱うかで、その企業のコンプライアンス(法令遵守)の姿勢そのものが問われる時代に入りました。」
——元大阪府警捜査二課刑事・特定行政書士 田原靖弘

2025年6月末、日本で暮らす外国人は約395万人と、過去最多を更新しました(総人口の3.2%)。その一方で、国の政策は大きく舵を切りつつあります。

2026年1月、政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定しました。在留資格の取得を厳しくする一方で、日本語教育や生活相談を充実させる——いわば「管理」と「共生」を両輪で進める方針です。

私は元捜査二課の刑事として、長年さまざまな事件の現場に向き合ってきました。その経験から申し上げると、ルールが整えられていく時代の入り口では、「これまで通り」が突然「見過ごせないこと」に変わります。本記事では、制度の細部ではなく、外国人を受け入れる企業がいま持つべき「全体像と視点」を俯瞰します。

外国人受け入れは、いま大きな曲がり角にある

数字が、時代の変化を物語っています。

  • 在留外国人は約395万人(2025年6月末・過去最多)
  • 近年の増加ペースは、政府の想定を上回るとされる
  • 政府は2026年1月、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定

この対応策では、永住許可に日本語能力の要件を設ける、帰化の居住要件を延ばす案など、在留資格の取得を慎重にする方向が示されました。内閣官房には「外国人との秩序ある共生社会推進室」も置かれています。同時に、日本語教育や生活支援の充実も掲げられており、決して「締め出す」だけの政策ではありません。

ポイントは、「受け入れればいい」時代から、「ルールに沿って適正に受け入れ、共に暮らす」時代への移行だということです。手続きのコストも上がります。在留資格関連の手数料は2026年に大幅な引き上げが予定されています(→在留手数料引き上げの影響ガイド)。

在留資格は、外国人にとって「人生の土台」である

私たちが何気なく「ビザ」と呼ぶ在留資格は、その人が日本で働き、暮らし、家族と過ごすための法的な土台です。これを失えば、生活のすべてを畳んで帰国を迫られることもあります。

そして、入管法(出入国管理及び難民認定法)は、非常に複雑な法律です。在留資格の種類は数多くあり、それぞれに細かな要件があります。手続きの一つの判断が、その人の在留の可否を左右することも珍しくありません。

これは、外国人を雇う企業にとっても他人事ではありません。雇用する外国人の在留資格は、事業の前提であり、企業が負う責任の一端です。「書類を出せば済む」話ではなく、一人の人生と、企業の信用がかかっているのです。

なぜ今、「専門職の関与」が問われるのか

これまで、外国人の受け入れ実務は、急速な人手不足を背景に、現場のスピードが優先される場面もありました。誰がどこまで手続きに関与してよいのか、その線引きが必ずしも明確に意識されてこなかった面があります。

しかし、「秩序ある共生」へと向かういま、その線引きが整えられつつあります。その象徴が、2026年1月に施行された改正行政書士法です。

この改正で、報酬を得て官公署に提出する書類を作成できるのは誰か、という線引きがより明確になりました。「コンサルティング料」「支援委託料」といった名目であっても"報酬"に当たることがはっきりと示され、違反には個人だけでなく法人にも罰則が及ぶようになっています(業務の制限=行政書士法第19条)。

つまり、「うちは支援委託料として払っているから」という説明では済まなくなった——これは事実として、外国人を受け入れる企業と支援機関の双方に関わる変化です。改正の詳しい内容は、別の記事で解説しています。

「取次」と「書類作成」——役割分担という解

ここで、よく混同される2つの行為を整理しておきます。

行為 内容 誰が担えるか
申請取次 本人に代わって書類を提出する 届出をすれば、登録支援機関などでも有償で可能
申請書類の作成 報酬を得て申請書類を作る 行政書士の業務(無資格は行政書士法違反)

大切なのは、「支援機関が悪い」という話ではないということです。役割が違うだけなのです。

登録支援機関は、生活支援・通訳・住居の確保・相談対応といった現場のプロです。行政書士は、在留資格申請や法令対応といった法務のプロです。それぞれが得意分野に集中し、役割を分けて連携すれば——企業も、支援機関も、そして迎える外国人材も守られます。いわば「三方よし」の形です。

実務的には、支援委託料と書類作成の報酬を請求書で明確に分けておくなど、整理のしかたがあります(→在留資格申請の新常識・取次のしくみ)。

企業がいま備えるべきこと

最後に、外国人を受け入れる企業が持っておきたい「点検の視点」を、俯瞰でまとめます。細かな手順は、それぞれの各論記事に譲ります。

  1. 在留資格と在留期限の把握 — 雇用する外国人一人ひとりの在留資格・期限を把握できていますか(→永住許可取消しの新基準と企業の防衛策就労ビザの必要書類
  2. 書類作成の委託先の点検 — 申請書類を「誰が・どんな立場で」作っているか。外注先は適法か(→改正行政書士法
  3. 制度移行への対応 — 技能実習から育成就労へ、特定技能の活用など、制度の移行に備えているか(→監理団体と監理支援機関の違い
  4. コストの織り込み — 手数料引き上げなど、増えるコストを見込んでいるか
  5. 不法就労助長罪のリスク理解 — この罪は2024年の改正で罰則が引き上げられることになりました。しかも、「知らなかった」という過失でも問われうる点に注意が必要です

いずれも、「管理を強めよ」という話ではありません。体制を適正に整えることが、結果として企業と人材の双方を守る——その視点が、これからの受け入れには欠かせません。

まとめ

  • 外国人の受け入れは、「コンプライアンス」が問われる時代に入った
  • 在留資格は、外国人にとって人生の土台であり、企業にとっては責任の一端
  • 「取次」と「書類作成」の線引きを理解し、専門職との役割分担で備える
  • 細部は各論記事を参照し、自社の体制を点検する

制度は複雑で、変化も速い。だからこそ、現場の支援は支援機関に、法務は専門職に——役割を分けて備えることが、秩序ある共生の時代をしなやかに乗り切る近道だと、私は考えています。

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田原 靖弘

この記事の著者

田原 靖弘

特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

大阪府警で18年間、捜査二課で詐欺・横領・企業犯罪の捜査に従事。退職後は会社役員として経営にも参画。 現在は特定行政書士として、企業の危機管理・外国人雇用支援・医療法人設立支援を行っている。

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