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監理支援機関を支える外部監査人の選び方|書類だけでなく現場で動く専門家を選ぶ視点

公開: 2026/4/27
更新: 2026/4/27
田原 靖弘
10 min read

育成就労制度では監理支援機関の許可基準が厳格化され、外部監査人の設置が義務化された(法第25条第1項第5号)。OTIT公表データでは2018-2026年で63団体の監理団体が許可取消しを受けているが、これらは組織の運営体制に起因する構造的な課題が多く、独立した外部の目があれば早期に発見できた可能性のあるものばかりである。優良認定基準の詳細は施行後に告示予定。外部監査人を「組織の運営を支えるパートナー」として選ぶ視点と、書類を読むだけでなく現場で動いて解決してきた実績のある専門家を見極める視点が重要である。

💡この記事の要点 / Key Takeaways

育成就労制度では監理支援機関の許可基準が厳格化され、外部監査人の設置が義務化されました(法第25条第1項第5号)。外部監査人を「組織の運営を支えるパートナー」として選ぶ視点と、書類を読むだけでなく現場で動いて解決してきた実績のある専門家を見極める視点を、警察官時代に多くの現場で動いてきた経験を持つ特定行政書士が解説します。

田原 靖弘
✍ この記事の執筆者

田原 靖弘申請取次行政書士 / 元大阪府警刑事

国内で初めて外国人グループによるクレジットカード偽造工場を摘発するなど、外国人犯罪の捜査にも従事。現在は取次行政書士として在留資格の申請取次業務を行っています。

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2027年4月、技能実習制度が育成就労制度に発展的に解消されます。これに伴い、現在の監理団体は新たに「監理支援機関」としての許可を取得する必要があります。許可基準は有識者会議の最終報告書(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議、2023年11月)および2024年6月公布の改正法(令和6年法律第60号)の方針により、全体として厳格化されました。

その中で重要な変更の一つが、外部監査人の設置義務化です。技能実習制度では「指定外部役員 or 外部監査人」の選択制でしたが、育成就労法では外部監査人による監査のみが許可要件となりました(法第25条第1項第5号)。

ただし、外部監査人の設置を形式的に整えるだけでは、監理支援機関の運営の安全は保証されません。どのような外部監査人を選ぶか、外部監査人とどのような関係を築くかが、許可継続のリスクと、組織の運営の安定性を左右します。

過去2018年から2026年4月までに、全国で63団体の監理団体が許可を取消されています(OTIT公表データ)。これらの取消事例に共通するのは、「書類は揃っていたが、組織として実態を見ていなかった」という構造的な課題です。日々の業務に追われる中で、当事者が気づきにくい課題があります。

本稿では、これらの取消事例から見える運営上のリスクと、監理支援機関にとって外部監査人をどう選び、どう関係を築くべきかを、警察官時代に多くの現場で動いてきた経験を持つ特定行政書士の立場から解説します。

外部監査人の設置義務化と法改正の趣旨

旧制度から新制度への一本化

技能実習制度では、監理団体は「役員のみで構成されない(指定外部役員)」または「外部監査人による監査」のいずれかを選択できました。育成就労法では、外部監査人による監査のみに一本化されました(法第25条第1項第5号)。

この変更を含む許可基準の厳格化は、有識者会議最終報告書(2023年11月)の方針に基づくものです。

法第25条第1項第5号 — 設置義務の根拠

育成就労法第25条第1項第5号は、監理支援機関の許可基準として次のように定めています。

監事その他法人の業務を監査する者による監査のほか、監理型育成就労実施者と主務省令で定める密接な関係を有しない者であって、職務の執行の監査を公正かつ適正に遂行することができる知識又は経験等を有する者として主務省令で定める要件に適合するものに、主務省令で定めるところにより、役員の監理支援事業に係る職務の執行の監査を行わせるための措置を講じていること。

「主務省令で定める要件に適合するもの」が、いわゆる外部監査人です。具体的な3要件は出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q30に整理されています。

  1. 養成講習を受講していること
  2. 弁護士、社会保険労務士、行政書士の有資格者その他育成就労の知見を有する者であること
  3. 監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者と密接な関係を有さないこと

この3要件はあくまで「最低ライン」です。監理支援機関にとって本当に大切なのは、これらの要件を満たしたうえで、組織の運営を支えてくれる外部監査人をどう選ぶかという視点です。

過去の取消し事例から学ぶ運営上のリスク

取消件数の推移

OTIT公表の取消事例を集計すると、2018年から2026年4月までに63団体が許可を取消されています。

年度取消件数
2018年1件
2019年2件
2020年8件
2021年19件(最多)
2022年7件
2023年11件
2024年2件
2025年6件
2026年(4月まで)7件

取消事由は組織の運営体制に起因する構造的な課題

これらの取消事例を読み込むと、取消事由のほとんどは、現場担当者の独断ではなく、組織の運営体制に起因する構造的な課題であることが分かります。

法令上、監査は監理責任者(旧制度の用語、新制度では監理支援責任者)の指揮の下で実施することとされています(法第40条等)。日々の業務に追われる中で、内部の人間が組織の課題に気づくことは難しく、書類は整っていても実態に問題が潜んでいるケースが少なくありません。

7つの典型パターン

OTIT公表データを分類すると、以下の7つの典型パターンが見えてきます。これらは「組織として陥りやすい運営上の課題」であり、独立した外部の目があれば早期に発見・防止できる可能性があるものばかりです。

① 監査が組織として機能していなかった(最多21件)

「傘下の実習実施者に対する監査を、監理責任者の指揮の下、適切に実施していなかった」事例。書類上は実施記録があっても、実態として実効性のある監査になっていなかったケースです。

② 監査報告書に実態と異なる記載があった(17件)

監査報告書を外国人技能実習機構に提出していたものの、内容と実態に乖離があった事例。組織内部だけで処理していると、こうした書類と実態のズレに気づきにくくなります。

③ 外国送出機関との取決めに不適切な内容があった(11件)

技能実習生が契約を不履行した場合に違約金を定めるなど、技能実習法第28条第1項違反となる覚書を送出機関と締結していた事例。送出機関との契約は専門的な確認が必要で、当事者だけで完結させると見落としが生じやすい領域です。

④ 入国後講習が認定計画通りに実施されていなかった(7件)

認定計画に従って入国後講習を実施していなかった、または講習期間中に業務に従事させていた事例。

⑤ 名義貸し(7件)

自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせていた事例。法第38条(名義貸しの禁止)違反として、即座に取消事由となります。

⑥ 不法就労ほう助等(6件)

事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせたと認められた事例。法第37条第1項第5号違反です。不法就労助長罪(入管法第73条の2)にも該当する可能性があり、刑事事件化のリスクもあります。

⑦ 訪問指導が適切に行われていなかった(4件)

傘下の実習実施者に対する訪問指導を適切に行っていなかった事例。

元刑事の視点から

私は警察官時代に不法就労事件の捜査指揮を担当した経験があります。その経験から言えることは、これらの取消事由は、ある日突然発生するのではなく、必ず兆候があるということです。

そして、組織の内部にいる人ほど、その兆候に気づきにくくなります。日常業務の延長線上で起きる小さな違和感は、当事者には「こういうものだ」と思えてしまうからです。だからこそ、外部の独立した目で運営を見てもらうことが、リスクの早期発見につながります。

外部監査人は「経営を支えるパートナー」

形式的な監査と実効的な監査の違い

外部監査人の業務は、運用要領で次のように定められています。

  • 定期監査(3か月に1回以上):事業所の設備確認、帳簿書類の閲覧、責任役員・監理支援責任者からの報告聴取、監査報告書の作成・提出
  • 同行監査(年1回以上):育成就労実施者(受入企業)への監査に同行、結果を記載した書類の作成・提出

これは「最低限の頻度」です。法令上の要件を満たすだけなら、毎回30分程度のチェックでも数字上は監査になります。

しかし、運営の安全を本当に支えてくれるのは、書類のチェックを超えて、組織の実態を理解し、リスクの兆候を共に発見し、改善策を一緒に考えてくれる外部監査人です。

「指摘される」から「一緒に守ってくれる」関係へ

「指摘してくる外部監査人は使いにくい」と感じる経営者の声があるのは、自然なことです。お金を払って雇う相手に小言を言われるのは、誰でも気持ちのよいものではありません。

しかし、視点を変えれば、外部監査人の役割は「指摘」ではなく「リスクを早期に発見し、解決方法を一緒に考えて実行する」ことです。気づかなかった課題を早期に発見してもらい、許可継続のリスクを未然に防ぐ。これは経営にとっての投資であり、コストではありません。

組織の中にいると見えにくいリスクを、外部の独立した目で見つけ、一緒に解決していく——この関係が築ける外部監査人を選ぶことは、監理支援機関にとって組織を守る経営上の意思決定です。

優良な監理支援機関認定との関係(現時点の整理)

受入人数枠の倍率

育成就労制度では、優良な監理支援機関として認定されると、傘下の優良な育成就労実施者で受け入れ可能な人数枠が拡大します。

区分受入人数枠
一般基本人数枠
優良な育成就労実施者基本人数枠の2倍
優良な監理支援機関の監理支援を受け、かつ指定区域(地方)に住所がある優良な育成就労実施者基本人数枠の3倍

最大3倍は「監理支援機関の優良性+実施者の優良性+地方所在」という三重条件です。

優良認定の評価項目(5項目)

新制度における「優良な監理支援機関」の認定基準について、運用要領では以下の5つの評価項目が示されています。

  • 監理型育成就労の実施状況の監査その他の業務を行う体制及び実施状況
  • 監理支援に係る監理型育成就労における技能及び日本語能力の修得に係る実績
  • 出入国又は労働に関する法令への違反、監理型育成就労外国人の行方不明者の発生その他の問題の発生状況
  • 監理型育成就労外国人からの相談に応じることその他の保護及び支援の体制並びに実施状況
  • 監理型育成就労外国人と地域社会との共生に向けた取組状況

配点や具体的基準は未公開(施行後に告示予定)

ここで重要な点は、新制度の優良認定の配点や具体的基準は、現時点(2026年4月)では公開されていないということです。運用要領では「制度施行後の一定期間の業務実施状況等に基づき評価」とされ、事前申請及び制度施行直後の申請受付は行われません。詳細基準は今後告示で示される予定です。

外部監査人と優良認定の関係(現時点の見方)

外部監査人の選定が直接的に優良認定の評価ポイントとなるかは、現時点の公開情報では明確に示されていません。ただし、評価項目の「法令違反等の問題の発生状況」「監査その他の業務を行う体制」などには、外部監査人を含む監査体制の質が間接的に影響する余地があります。

詳細基準が告示されるまでは、外部監査人による継続的な監査を通じて、運営体制を整えておくことが、優良認定の入口を保つ意味でも重要です。

万一のリスク(行政指導・取消し)に備える

軽微な違反と重大な違反の二極構造

法令違反が発覚した場合の処分は、必ずしも段階的に進むわけではありません。実務的には「改善命令で済む軽微な違反」と「即取消しとなる重大な違反」の二極構造になっています。

処分の種類根拠条文適用の傾向
報告徴収・立入検査法第35条全違反疑義
改善命令法第36条軽微な違反、是正可能なもの
業務停止命令法第37条第2項同条第1項第1号、第3号、第4号該当時
許可取消し法第37条第1項重大な違反、虚偽・不法行為

OTIT公表事例の多くは「改善命令」を経ずに直接取消しとなっています。これは、重大な違反は段階的処分の対象とならないという法令の構造を示しています。

業務停止命令の根拠条文

業務停止命令は育成就労法第37条第2項に基づきます。

主務大臣は、監理支援機関が前項第一号、第三号又は第四号のいずれかに該当するときは、期間を定めて当該監理支援事業の全部又は一部の停止を命ずることができる。

なお、同条第3項は処分の公示について定めています。業務停止命令の発令例は実務的には少なく、多くの重大違反は直接「取消し」となっています。

審査請求という選択肢

万が一、許可の取消し処分を受けた場合、行政不服審査法に基づく審査請求が可能です。

申立期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(再調査請求した場合は1か月)(行政不服審査法第18条第1項)。

審査請求の特徴は、行政の判断が違法であるかだけでなく、不当であるかどうかも審査の対象になることです。「法律には違反していないが、この判断はおかしい」という主張も正式にできる制度です。

特定行政書士による代理

審査請求の代理は、特定行政書士(全行政書士の約11%)の業務範囲です。通常の行政書士では、申請まではできても、不許可後の不服申立てまで対応する体制が整っていないことが多いのが実情です。

事業継続を左右する処分には、申請から監査、万一の審査請求まで一気通貫で対応できる事務所への依頼が望まれます。詳しくは関連記事「監理支援機関の許可申請が間に合わない場合の対応策」をご参照ください。

監理支援機関が外部監査人を選ぶときの本質的な視点

法定要件はあくまで最低ライン

外部監査人の3要件(出入国在留管理庁Q&A Q30)は最低ラインに過ぎません。

  1. 養成講習を受講していること
  2. 専門資格保有者または育成就労の知見を有する者
  3. 受入企業と密接な関係がないこと

これらは「資格の有無」のチェックです。実際に運営を支えてくれる外部監査人を見極めるには、別の視点が必要です。

質を見る4つの視点

視点1:経営目線での監査ができるか

形式的な書類チェックだけでなく、現場で何が起きているかを把握し、実行可能な改善策まで提案できる経験があるか。社労士は労務、弁護士は法的紛争に強い分野がそれぞれありますが、「経営の現場で何が起きるか」を理解している外部監査人は限られます。経営者と同じ目線で組織を見てもらえるかどうかが重要です。

視点2:書類を読むだけでなく、現場で行動し解決してきた実績があるか(最重要)

4つの視点の中でも、私が最も重要だと考えるのがこの視点です。

実務の現場では、書類に表れない問題が必ず起こります。技能実習生・育成就労外国人の失踪、外国人同士のトラブル、外国人グループによる組織的な事件、受入企業との微妙な関係、行政との折衝、隠れた違反の兆候——これらは、書類を読むだけ、法的アドバイスを言うだけの外部監査人では対応できません。

本当に違いを生むのは、生の現場でトラブルを経験し、当事者と向き合い、仲裁し、最終的に解決まで導いてきた実績があるかどうかです。アドバイスを「言うだけ」の人ではなく、「実際に行動し、解決してきた」人かどうか。これが弁護士・社労士・行政書士という資格の違いではなく、個々の専門家の質を決める本質的な違いです。

書類審査だけで判断する外部監査人と、現場で動いて解決してきた外部監査人とでは、有事の際の頼りになる度合いが全く違います。形式的な要件を満たすだけの監査人ではなく、本当に組織を支えてくれる人を選ぶことが、監理支援機関の運営の安全につながります。

視点3:行政との交渉力があるか

是正勧告・許可更新時のリスクが顕在化したとき、行政とのやり取りに耐えられる経験があるか。行政内部での実務経験は、こうした場面で大きな差を生みます。

視点4:万一の対応力があるか

不許可や行政処分が起きたとき、審査請求まで一気通貫で対応できるか(特定行政書士の有無)。「監査だけ」「申請だけ」の士業に依頼するのと、「申請から監査、万一の審査請求まで」一気通貫の士業に依頼するのとでは、有事の対応力が全く異なります。

費用と依頼先の比較

費用相場や、行政書士・社労士・弁護士のどこに依頼すべきかについては、関連記事「外部監査人の費用相場と依頼先の選び方」で詳しく解説しています。

大阪・近畿で外部監査人をお探しの方へ

外部監査では事業所や受入企業への定期的な訪問が必要なため、近隣の専門家に依頼することが、交通費の抑制と迅速な対応の両面で有利です。当事務所は大阪市北区を拠点に、大阪府・近畿2府4県の監理団体を対象として、許可申請の代行から外部監査人の就任までワンストップで対応しています。

当事務所の特徴

  • 監理責任者等講習を受講済み(2026年4月) — 経過措置により外部監査人の養成講習要件を満たします(出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q37)
  • 外国人にまつわるトラブル・犯罪捜査に豊富な対応実績のある特定行政書士 — 警察官時代に、技能実習生の失踪事案、外国人同士の喧嘩トラブル、外国人グループによる組織的な偽造事件、不法就労事件など、多種多様な事案で実際に現場に出て、関係者と向き合い、仲裁し、解決まで導いてきました。書類を読むだけ、アドバイスを言うだけではなく、実際に行動し、解決してきた実績があります
  • 企業経営の実績(取締役として経営改革を推進中) — 経営の現場で実際に意思決定し、改善を実行しています。経営者と同じ目線で組織の課題を見ます
  • 特定行政書士(全行政書士の約11%) — 万一の不許可・行政処分時に、審査請求まで一気通貫で対応可能

外部監査人を「形式的な義務を果たすため」ではなく「組織の運営を支えるパートナー」として選びたい方、書類を読むだけでなく現場で動いて解決してきた実績のある専門家をお探しの方は、まずは無料相談をご利用ください。

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田原 靖弘

この記事の著者

田原 靖弘

特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

大阪府警で18年間、捜査二課で詐欺・横領・企業犯罪の捜査に従事。退職後は会社役員として経営にも参画。 現在は特定行政書士として、企業の危機管理・外国人雇用支援・医療法人設立支援を行っている。

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