コラム一覧に戻る
不正に関する記事#詐欺 手口#詐欺 見抜き方#投資詐欺 対策#ビジネスメール詐欺#元刑事 詐欺対策

詐欺師の手口と見抜き方|元捜査二課刑事が教える5つの防衛術

2026/3/8
田原 靖弘
8 min read

💡この記事の要点 / Key Takeaways

詐欺師が最初にすることは「信頼を作ること」。元大阪府警捜査二課の刑事が、取り込み詐欺・投資詐欺・ビジネスメール詐欺・AI音声詐欺の手口と、今日から実践できる5つの防衛術を解説。「一晩寝かせる」「急がせる相手を疑う」——詐欺の本質は信頼の偽装にある。

元大阪府警捜査二課の刑事として、数多くの詐欺事件を捜査してきました。

この記事では、詐欺師が使う「信頼の偽装」というテクニックの本質と、経営者・ビジネスパーソンが今すぐ実践できる5つの防衛術をお伝えします。

詐欺師が最初にすること —「信頼の偽装」

詐欺師が最初にすることを知っていますか。

お金の話をする? いいえ。嘘をつく? それも違います。

最初にするのは、「信頼を作ること」です。

詐欺師は驚くほど丁寧です。約束を守る。時間を守る。礼儀正しい。最初は一切、お金の話をしません。相手が「この人は信頼できる」と思った瞬間を狙って、初めてお金の話を出す。

しかも、こう言います。

「私も最初は疑っていました」

相手の警戒心を先に代弁するんです。これで、相手は「この人は正直だ」と思う。

捜査二課で何件もの詐欺事件を担当してきましたが、詐欺のテクニックの本質は「嘘」ではなく「信頼の偽装」です。ここを理解しているかどうかで、被害に遭うかどうかが決まります。

詐欺に遭う人の共通点

取り調べで詐欺師に聞いたことがあります。「どうやって相手を選ぶのか」。

答えはシンプルでした。

「断れない人を選ぶ」

礼儀正しく、人を疑えない。その優しさにつけ込む。優しさは美徳です。しかし、優しさだけでは身を守れない。

もう一つ、詐欺に遭う人に共通していたのは、「判断力がない」ことではなく、「判断を急がされた」ことでした。詐欺師は必ず期限を切ります。「今日中に」「明日まで」「今だけ」。冷静に考える時間を与えない。これが詐欺の常套手段です。

経営者が注意すべき詐欺の手口

経営者やビジネスパーソンが特に注意すべき手口を、捜査経験をもとに解説します。

1. 取り込み詐欺

最初は少額の取引を正常に行い、信用を積み上げます。取引額が大きくなった段階で代金を踏み倒す手口です。最初の取引が正常だからこそ疑えない。これも「信頼の偽装」の一種です。

見抜くポイント:新規取引先が急に大口発注してきたら要注意。商業登記簿で設立時期・役員変更の頻度を確認してください。設立から間もない会社や、役員が頻繁に変わる会社はリスクが高い。

2. 投資詐欺

投資詐欺に共通するパターンがあります。

  • 元本保証を謳う
  • 年利10%以上の高利回りを約束する
  • 紹介者に報酬が支払われる

この3つが揃ったら、ほぼ確実に詐欺です。例外はありません。

金融庁に登録のない業者からの投資勧誘は、そもそも金融商品取引法違反です。「金融庁 金融商品取引業者検索」で必ず確認してください。

3. ビジネスメール詐欺(BEC)

取引先や上司を装ったメールで、振込先の変更を指示する手口です。被害額は1件あたり数百万〜数千万円に達することもあります。

巧妙なのは、実際の取引の流れを把握した上で割り込んでくる点です。取引先のメールアカウントがハッキングされている場合、メールの内容まで把握されていることがあります。

見抜くポイント:振込先の変更依頼は、メールだけで処理せず、必ず電話で相手に直接確認する。このルールを社内で徹底するだけで防げます。

4. AI音声詐欺(ディープフェイク詐欺)

AIで合成した「社長の声」で振込指示をする手口が出てきています。音声だけでなく、映像まで偽造するケースも報告されています。

テクノロジーが進化しても、詐欺の本質は変わりません。お金が動く指示は、必ず本人に直接確認する。「電話で言われた」「メールで指示があった」だけで動かないこと。これが鉄則です。

元刑事が教える5つの防衛術

詐欺から身を守るために、今日から実践できる5つの防衛術をお伝えします。

防衛術①:一晩寝かせる

お金が絡む重要な判断は、必ず一晩寝かせてください。急がせる相手ほど、怪しい。一晩で冷静さを取り戻せれば、大半の詐欺は防げます。捜査の経験上、被害者の多くが「あのとき一晩考えていれば」と悔やんでいました。

防衛術②:「なぜ急ぐのか」を問う

詐欺師は必ず期限を切ります。「今日中に」「今だけ」。まともなビジネスであれば、検討の時間を与えないことはありません。「なぜ急ぐのか」を冷静に問いかけてください。まともな理由が返ってこなければ、その話は疑ってかかるべきです。

防衛術③:お金が動く指示は本人に直接確認

振込先の変更、大口の送金指示、新たな投資の話——お金が動く場面では、メール・電話だけで判断せず、必ず本人に別の手段で直接確認する。これをルールとして社内に徹底してください。

防衛術④:「元本保証×高利回り×紹介制」は詐欺

この3つが揃った投資話は、ポンジスキーム(自転車操業型詐欺)の可能性が極めて高い。どんなに信頼できる人からの紹介でも、この組み合わせには手を出さないでください。

防衛術⑤:契約前に必ず第三者に相談

詐欺師は「二人だけの話」にしたがります。「他の人に相談しないでください」と言われたら、それ自体が危険信号です。大きなお金が動く話は、必ず弁護士・行政書士・税理士など、利害関係のない第三者に相談してください。

まとめ — 詐欺の本質は「人間の弱さ」につけ込むこと

18年間の捜査を通じて確信していることがあります。

詐欺は「頭の良し悪し」で遭うものではありません。人を信じたい、断れない、急かされると焦る——そうした「人間の弱さ」につけ込むのが詐欺の本質です。

だからこそ、仕組みで守ることが重要です。「一晩寝かせる」「第三者に相談する」「本人に直接確認する」。個人の判断力に頼るのではなく、ルールとして定着させてください。

詐欺の手口は変わっても、守り方の原則は変わりません。

もし「怪しい話が来ている」「社内の対策を見直したい」という方がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。元刑事の視点で、具体的な対策をご提案します。


関連サービス

危機管理・行政防衛サービス

社内不正の予防体制構築から、発覚時の対応まで、元刑事がトータルサポートします。

サービス詳細を見る
田原 靖弘

この記事の著者

田原 靖弘

特定行政書士 / 元大阪府警捜査二課刑事

大阪府警で18年間、捜査二課で詐欺・横領・企業犯罪の捜査に従事。退職後は会社役員として経営にも参画。 現在は特定行政書士として、企業の危機管理・外国人雇用支援・医療法人設立支援を行っている。

社内不正の予防・対応でお悩みですか?

不正が起きてからでは手遅れです。元刑事の視点で、不正が起きにくい組織体制の構築から、発覚時の初動対応までトータルでサポートします。
初回相談は無料です。

無料相談を予約する
Web相談・見積
電話で無料相談