
💡この記事の要点 / Key Takeaways
2024年3月に対象分野への追加が決定し、2024年12月から受入れが本格化した特定技能「自動車運送業」。2024年問題で深刻化するドライバー不足に、外国人トラックドライバー採用という選択肢が加わりました。技能試験・日本語要件・運転免許の3つのハードルから、受入れ体制構築、費用目安、法的リスクまで、取次行政書士が実務ベースで徹底解説。
「ドライバーが足りない」——運送業界の悲鳴が、年々大きくなっています。
2024年4月、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限規制が適用されました。いわゆる「2024年問題」です。ドライバー1人あたりの稼働時間が制限され、もともと深刻だった人手不足がさらに加速しています。
この状況を受けて、2024年3月29日の閣議決定により、特定技能の対象分野に「自動車運送業」が新たに追加されました。外国人がトラック・バス・タクシーのドライバーとして日本で働く道が、初めて正式に開かれたのです。
元大阪府警刑事として外国人犯罪の捜査に携わり、現在は取次行政書士として在留資格の申請業務を行っている立場から、制度の仕組み、採用の要件、企業が整えるべき体制、そして法的リスクを解説します。
なぜ今、外国人ドライバーなのか — 2024年問題の衝撃
まず、運送業界がどれほど深刻な状況に置かれているかを把握してください。
数字で見るドライバー不足
- 有効求人倍率:全産業平均の約2倍 — 国土交通省の資料では令和5年度で2.18倍(全産業平均1.17倍)。求人が求職者を大きく上回る状態が常態化しています
- 高齢化が深刻 — 国土交通省の資料によると、ドライバーの高齢化は全産業平均を大幅に上回っており、今後10〜15年で大量退職が見込まれます
- 2030年には輸送能力が34.1%不足する見通し(対策なしの場合)
- 年間賃金は全産業平均(507万円)を下回り、年間労働時間は全産業より月31〜36時間長い
出典:厚生労働省「職業安定業務統計」、国土交通省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」資料
賃金は低く、労働時間は長く、高齢化が進む——この三重苦の中で時間外労働の上限規制が始まりました。国内人材の確保だけでは限界があると判断し、政府は特定技能に自動車運送業を追加したのです。
今後5年間の受入れ見込み数は、2024年3月の制度創設時に最大24,500人とされていましたが、2026年1月23日の見直しにより2.21万人に改定されています(国土交通省資料)。約28万8,000人と見込まれる人手不足に対して全てを賄う規模ではありませんが、外国人材を「戦力として迎え入れる」という大きな一歩です。
特定技能「自動車運送業」の制度概要
制度の基本構造を整理します。
制度の時系列
- 2024年3月29日 — 閣議決定。特定技能の対象に自動車運送業を追加
- 2024年12月16日 — 第1回技能評価試験を実施
- 2024年12月19日 — 上乗せ基準告示の施行。この日をもって受入れが制度上可能に
- 2025年1月17日 — 自動車運送業分野特定技能協議会への加入受付を開始
- 2025年3月 — 特定技能による初の外国人トラックドライバーが誕生
- 2025年7月30日 — 初の特定技能外国人タクシードライバーが乗務開始
対象となる3つの業務区分
トラック
貨物自動車運送事業における運転業務。第一種運転免許(普通/中型/大型)が必要。日本語要件はA2.2相当以上(JLPT N4またはJFT-Basic)。
バス
旅客自動車運送事業(バス)における運転業務。第二種運転免許が必要。日本語要件は原則B1相当以上(JLPT N3)。新任運転者研修の修了も必要。※2026年1月見直しにより、乗合バスの一部では日本語サポーター同乗等を条件にA2.2相当でも可。
タクシー
旅客自動車運送事業(タクシー)における運転業務。第二種運転免許が必要。日本語要件は原則B1相当以上(JLPT N3)。新任運転者研修の修了も必要。※2026年1月見直しにより、一部ではA2.2相当でも認められる場合があります。
重要:現時点では特定技能1号のみ
自動車運送業は現在特定技能1号のみが対象で、2号は認められていません。そのため、通算在留期間は最長5年です。5年を超えて長期的に働き続けるには、他の在留資格への変更が必要になります。今後2号に追加される可能性を指摘する声もありますが、現時点では確定していません。
採用の要件 — 3つのハードル
外国人ドライバーを採用するには、本人が3つのハードルをクリアする必要があります。
ハードル1:技能評価試験に合格する
一般財団法人日本海事協会(ClassNK)が実施する「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」に合格する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験区分 | トラック・バス・タクシーの3区分 |
| 形式 | 三肢択一20問、学科+実技で80分(実際の運転操作はなし) |
| 方式 | CBT方式(テストセンターで随時受験可能) |
| 受験資格 | 17歳以上、かつ自国または日本の有効な運転免許を保有 |
| 実施国 | 日本+海外15カ国(インドネシア、ベトナム、フィリピン等) |
| 合格率 | トラック77.3%、タクシー64.3%、バス89.5%(令和6年度報告書) |
出典:一般財団法人日本海事協会(ClassNK)公式サイト
ハードル2:日本語能力要件を満たす
2026年1月23日の見直しにより、日本語要件がCEFR基準で整理されました。試験はJLPT(日本語能力試験)だけでなく、JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)でも要件を満たせます。
| 業務区分 | 日本語要件 | 備考 |
|---|---|---|
| トラック | A2.2相当以上(JLPT N4またはJFT-Basic) | — |
| バス・タクシー(原則) | B1相当以上(JLPT N3) | 乗客対応のため高い日本語力が必要 |
| 乗合バス・タクシー(一部) | A2.2相当でも可 | 日本語サポーター同乗等の条件付き(2026年1月見直し) |
A2.2(N4相当)は「基本的な日本語がわかる」レベル、B1(N3相当)は「日常的な場面で使われる日本語がある程度理解できる」レベルです。
ハードル3:日本の運転免許を取得する
これが最大の関門です。国際運転免許証のみでは事業用自動車の運転業務に従事できません。必ず日本の運転免許が必要です。
取得方法は2つあります。
方法A:日本の教習所で取得
日本国内の自動車教習所に通って新規取得。確実だが時間と費用がかかります。
方法B:外免切替(外国免許の切替え)
母国の運転免許を日本の免許に切替える方法。母国で免許取得後、当該国に通算3か月以上滞在していることが条件です。
2025年10月1日:外免切替が大幅に厳格化
2025年10月1日から外免切替制度が厳格化されました。
- 住民票の写しが原則必須に(短期滞在者は切替え不可)
- 学科試験が○×10問から○×50問・正答率90%以上に(日本人の新規取得と同等水準)
- 技能確認も日本人の免許取得と同程度に厳格化
この厳格化により、外免切替のハードルは大幅に上がりました。企業として免許取得の支援体制を整えることが、採用の成否を分けます。
バス・タクシーの追加要件:バス・タクシーでは、第二種運転免許・技能評価試験・日本語要件に加え、新任運転者研修の修了も必要です(国土交通省運用要領)。
なお、大型免許の取得には21歳以上かつ運転経験3年以上が原則です。母国で大型免許を持っていても、日本では「まず普通免許に切替え → その後大型免許に切替え」という2段階の手続きが必要になるケースが一般的です。
在留資格「特定活動」で免許取得期間を確保できる
日本の運転免許を取得するまでの準備期間として、「特定活動(特定自動車運送業準備)」という在留資格が設けられています。
- トラック:最長6か月
- タクシー・バス:最長1年
この期間中は運転業務はできませんが、車両清掃や積込み補助などの関連業務は可能です。重要なのは、この期間は特定技能1号の通算5年に含まれないという点です。免許取得に時間がかかっても、就労可能期間が削られることはありません。
ただし、この期間内に免許を取得できなければ特定技能への移行はできません。延長も認められないため、計画的な免許取得支援が不可欠です。
企業が整えるべき受入れ体制
外国人ドライバーを受け入れるには、企業側にも複数の要件があります。
要件1:認証制度の取得
受入れ企業は、以下のいずれかの認証を取得している必要があります。
- トラック事業者:Gマーク(安全性優良事業所認定)または「働きやすい職場認証制度」
- バス・タクシー事業者:「働きやすい職場認証制度」
Gマークの申請は年1回(7月)のみです。未取得の企業は、申請時期を逃すと1年待つことになります。「働きやすい職場認証制度」は随時申請が可能です。
要件2:協議会への加入
自動車運送業分野特定技能協議会への加入が必須です(審査に約1か月)。加入対象は受入れ事業者だけでなく、登録支援機関にも及びます。協議会は国土交通省が所管し、以下の義務があります。
- 他の機関の特定技能外国人の引抜き禁止
- 大都市圏での受入れ自粛要請に従うこと
- 円滑な運転免許取得に向けた対応を実施すること
- 国土交通省の調査・指導に協力すること
要件3:支援体制の構築
特定技能外国人に対して、以下の義務的支援を行う必要があります。自社で行うか、登録支援機関に委託するかを選べます。
- 事前ガイダンス(母国語での説明)
- 出入国時の送迎
- 住居確保の支援
- 生活オリエンテーション
- 行政手続きへの同行
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情への対応(母国語対応可能な体制)
- 定期面談の実施
義務的支援にかかる費用を外国人本人に負担させることは一切禁止されています。給与からの天引きや本人への請求は、本人の同意があっても法令違反です。
元刑事が警告する法的リスク
外国人ドライバーの採用には、通常の外国人雇用以上に厳しい法的リスクが伴います。元刑事として、特に警告しておきたい3つのリスクがあります。
リスク1:不法就労助長罪(2025年6月施行済みの厳罰化)
2025年6月から、不法就労助長罪の罰則が大幅に引き上げられています。
| 項目 | 改正前 | 改正後(施行済み) |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 3年以下 | 5年以下 |
| 罰金 | 300万円以下 | 500万円以下 |
| 併科 | 不可 | 懲役と罰金の併科が可能 |
「知らなかった」は通用しません。在留カードの確認を怠っただけでも処罰対象になりえます。特定技能の場合、在留カードに記載された「活動の種類」と実際の業務内容が一致しているかまで確認が必要です。
リスク2:交通事故時の使用者責任
ドライバーが業務中に交通事故を起こした場合、刑事責任は本人のみですが、民事の賠償責任は企業にも及びます(使用者責任)。これは日本人ドライバーでも同様ですが、外国人ドライバーの場合はさらに以下の点に注意が必要です。
- 日本の交通ルールや道路標識への慣れが十分か
- 日本語での緊急時対応(110番・119番通報)が可能か
- 任意保険への加入は適切か
リスク3:在留資格の管理不備
特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、在留カードの更新や変更届出を怠ると、不法滞在に発展するリスクがあります。在留期限の管理台帳を作成し、更新時期をアラートで管理する仕組みを構築してください。
採用から就労開始までのタイムライン
海外から新規で受け入れる場合、全体で概ね1年〜1年半を見込む必要があります。
-
1
事前準備(1〜3か月)
協議会への加入申請(審査に約1か月)、Gマーク/認証制度の確認・取得 -
2
人材選定・試験合格(2〜6か月)
海外での人材募集、日本語試験(N4/N3)と技能評価試験の受験・合格 -
3
在留資格申請・入国(1〜3か月)
在留資格認定証明書の交付申請 → ビザ申請 → 入国 -
4
免許取得期間=在留資格「特定活動」(最長6か月〜1年)
日本の運転免許取得(教習所 or 外免切替)。この期間中は運転業務以外の関連業務に従事 -
5
特定技能1号への変更(1〜2か月)
在留資格変更申請 → 許可後、ドライバーとして就労開始
費用の目安
登録支援機関に全委託する場合の、初年度の費用相場です。公定価格ではなく、業界の一般的な相場として参考にしてください。
| 費目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録支援機関への初期費用 | 30〜40万円 | ガイダンス、生活支援等を含む |
| 月額委託費 | 約2〜4万円/人/月 | 平均約2.8万円(入管庁調べ) |
| 在留資格申請(行政書士委託) | 12〜20万円/人 | 認定・変更申請 |
| 住居関連費用 | 40〜50万円 | 敷金・礼金・家具等 |
| 運転免許取得支援費 | 20〜40万円程度 | 大型免許の場合はさらに高額 |
| 初年度合計(目安) | 100〜150万円程度 | +月額2〜4万円の委託費 |
※上記は一般的な目安です。個別の状況により大きく変動します
大手企業の動き — 業界は動き始めている
制度開始から日が浅く、受入れ実績はまだ極めて少ない段階ですが、大手企業を中心に動きが出始めています。
- ヤマト運輸 — 報道によると、FPTジャパンと提携し、ベトナム人ドライバーを年間100名規模で育成、2027年以降に最大500名を受け入れる計画。拠点間の幹線輸送(大型トラック)を担当する見込み
- SBSホールディングス — 報道によると、10年以内にドライバーの3割(約1,800人)を外国人にする計画。インドネシアでの全寮制自動車学校設立も予定
- 福山通運 — ベトナムでのドライバー育成プロジェクトを公式に発表。報道によると、ベトナム人運転者の初採用を計画
- センコーグループ — 報道によると、2032年度までに100人規模の外国人運転者を計画
大手が先行する中で、中小の運送事業者こそ早めに動く価値があります。受入れ体制(Gマーク、協議会加入、登録支援機関の選定)の整備には時間がかかります。「大手がやってから」では、人材の争奪戦に出遅れることになります。
よくある質問
Q1. うちは小さな運送会社ですが、外国人ドライバーを受け入れられますか?
会社の規模は問われません。ただし、Gマークまたは「働きやすい職場認証制度」の取得、協議会への加入、義務的支援の実施体制が必要です。支援体制については登録支援機関に委託することも可能なので、自社の負担を抑えつつ受入れを進めることはできます。ただし、貨物軽自動車運送事業のみを行う事業者は、現行制度上、特定技能外国人を受け入れることができません(国土交通省Q&A)。
Q2. 免許を取得できなかった場合はどうなりますか?
在留資格「特定活動」の期間(トラック最長6か月、タクシー・バス最長1年)内に日本の運転免許を取得できなかった場合、特定技能への在留資格変更ができません。延長も認められないため、帰国するか他の在留資格で滞在する方法を検討する必要があります。企業としては、免許取得の支援体制(教習所の手配、日本語での学科対策等)を事前に整えておくことが極めて重要です。
Q3. 5年経ったらどうなりますか?
現時点では自動車運送業は特定技能1号のみが対象で、通算5年が上限です。5年後に継続して働くには、他の在留資格への変更が必要になります。将来的に特定技能2号に追加される可能性を指摘する声もありますが、現時点では確定していません。
Q4. 行政書士に何を相談できますか?
申請取次行政書士には、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請など、出入国在留管理庁に対する在留資格手続を相談できます。自動車運送業分野の特定技能では、在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」から特定技能1号への移行を含む申請手続、必要書類の整備、支援計画書等の作成支援を受けることができます。また、協議会加入届出や受入れ要件の確認など、分野特有の実務についても行政書士がサポートできます。制度が新しく、入管手続と分野固有の届出が並行するため、早い段階で専門家に相談するのが安心です。
まとめ — 外国人ドライバー採用で失敗しないためのチェックリスト
最後に、外国人ドライバーの採用を検討している企業が確認すべきポイントを整理します。
- ☐ Gマークまたは「働きやすい職場認証制度」を取得しているか(未取得なら申請時期を確認)
- ☐ 自動車運送業分野特定技能協議会に加入しているか
- ☐ 登録支援機関を選定しているか(自社支援か委託か)
- ☐ 運転免許取得の支援体制を整えているか(教習所の手配、学科対策等)
- ☐ 住居の確保(寮、賃貸物件等)の見通しが立っているか
- ☐ 在留カードの管理台帳・更新アラートの仕組みがあるか
- ☐ 安全教育の計画を策定しているか
- ☐ 初年度の費用(100〜150万円+月額委託費)を予算に織り込んでいるか
人が足りないなら、来てくれる人を正しく迎え入れる。それが法令遵守であり、経営判断です。
行政書士からのアドバイス
特定技能「自動車運送業」は、2024年12月に受入れが始まったばかりの新しい制度です。手続きの運用が定まっていない部分も多く、今後も制度の詳細が更新される可能性があります。
大阪府警で18年間、外国人犯罪の捜査にも携わってきた経験から言えることがあります。「人手が足りないから」と焦って手続きを省略すれば、不法就労助長罪という刑事罰のリスクに直面します。人材確保の切迫感はよくわかりますが、だからこそ、制度を正しく理解し、適法に受入れを進めることが最も確実な道です。
「うちの会社で受入れ可能か」「何から始めればいいか」——まずはお気軽にご相談ください。協議会への加入から在留資格の申請まで、一貫してサポートいたします。
初回相談は無料です。

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