
💡この記事の要点 / Key Takeaways
2026年3月10日閣議決定。永住許可の手数料上限が1万円→30万円、在留資格の変更・更新が1万円→10万円に。長年据え置かれてきた上限額の大幅な見直しで、企業と外国人が直面するコスト増の全貌と、今やるべき5つのアクションを取次行政書士が解説。
2026年3月10日、政府は在留手数料の上限を最大30倍に引き上げる入管法改正案を閣議決定しました。
永住許可の手数料上限が1万円から30万円に。在留資格の変更・更新も1万円から10万円に。1981年以来とされる、長年据え置かれてきた上限額の大幅な見直しです。
「うちの外国人社員の更新費用はどうなるのか」「永住申請は今のうちに出すべきか」——企業の人事担当者と外国人本人の双方から、不安の声が広がっています。
元大阪府警刑事として外国人犯罪の捜査に携わり、現在は取次行政書士として在留資格の申請業務を行っている立場から、手数料改正の正確な内容、企業と外国人への影響、そして今やるべきことを解説します。
何が変わるのか — 在留手数料の新旧比較
まず、正確に理解してください。今回の改正は「法律上の上限額」の引き上げです。実際にいくら払うかは、今後の政令で決まります。
法律上の上限額(改正案)
| 手続き | 現行上限 | 改正後上限 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 在留資格変更許可 | 1万円 | 10万円 | 10倍 |
| 在留期間更新許可 | 1万円 | 10万円 | 10倍 |
| 永住許可 | 1万円 | 30万円 | 30倍 |
「30万円」は上限であり、実際の金額ではありません
報道では「永住許可が30万円に」と誤解を招く表現が見られますが、30万円はあくまで法律で定める上限額です。実際の徴収額は今後の「政令」で決まります。
一部報道では、在留資格の変更・更新が3万〜4万円程度、永住許可が10万〜20万円程度と見込まれていますが、これらは正式決定ではなく、あくまで報道ベースの見込み額です。正式な金額は今後の政令を待つ必要があります。それでも現行の数倍〜十数倍の大幅な引き上げとなる方向です。
現行の実際の徴収額(2025年4月改定後)
| 手続き | 窓口申請 | オンライン申請 |
|---|---|---|
| 在留資格変更許可 | 6,000円 | 5,500円 |
| 在留期間更新許可 | 6,000円 | 5,500円 |
| 永住許可 | 10,000円 | — |
出典:出入国在留管理庁「在留手続等に関する手数料の改定」
なぜ今、大幅に引き上げるのか — 4つの背景
政府が示している引き上げの理由は、主に4つあります。
① 在留外国人の急増
法務省公表の2025年6月末時点で在留外国人は約395万7千人(報道では2025年末に約413万人に達したとされています)。手続き件数が恒常的に増加し、入管の処理能力が限界に達しています。審査体制の強化には財源が必要です。
② 外国人支援施策の財源確保
適正かつ円滑な外国人の受入れと、共生社会の実現に向けた施策を進めるための財源を、応益的な観点から確保する狙いがあります。
③ オンライン申請システムの整備
在留手続きのデジタル化を推進するためのシステム開発・運用費用を手数料で賄う構想です。オンライン申請で手数料を割引する仕組みも検討されています。
④ 国際水準への是正
日本の在留手数料は、諸外国と比べて極端に低い水準にありました。政府は主要国の手数料水準を引き合いに出しており、例えば米国のグリーンカード申請は数十万円規模、英国の永住権申請も同様に高額です。
ただし、手続きの種類や対象者の範囲が国ごとに異なるため、単純な横並び比較には注意が必要です。日本の賃金水準で外国人が負担する金額としては決して軽くないという点は、十分に認識しておくべきでしょう。
企業への影響 — コスト増と対応すべきポイント
外国人を雇用する企業にとって、手数料の引き上げは直接的なコスト増を意味します。
コスト増の試算例
外国人社員10名を雇用する企業が、毎年の在留期間更新を行う場合:
現行
6,000円 × 10名 = 年間6万円
改正後(報道ベースの見込み額)
3〜4万円 × 10名 = 年間30万〜40万円
年間コストが約5〜7倍に跳ね上がります。外国人社員が多い企業ほど、経営へのインパクトは大きくなります。
企業が今すぐ確認すべき3つのポイント
-
1.
雇用契約書の手数料負担条項
在留資格の更新手数料を企業が負担しているか、本人負担か。福利厚生として企業負担にしているケースは多いですが、金額が数倍になっても同じ条件で続けるのか、見直しが必要です。 -
2.
来年度の採用計画・予算
外国人材の採用コストに手数料増額分を織り込んでください。特に特定技能人材の採用では、登録支援機関への委託費に加えて手数料増が重なります。 -
3.
永住許可申請中の社員への対応
永住許可の手数料は現行10,000円ですが、改正後は大幅に引き上げられる見込みです。施行前に申請すれば現行手数料が適用される可能性がありますが、経過措置の詳細は未公表のため、今後の情報を注視してください。
外国人本人への影響 — 永住申請は急ぐべきか
外国人の方が最も気になるのは、「永住許可の申請を急いだ方がいいのか」という点でしょう。
施行前に申請すべきケース
- すでに永住許可の要件を満たしている方(一般に10年以上の継続在留などの要件があります。詳細は個別にご確認ください)
- 必要書類がおおむね揃っている方
- 税金・社会保険の未納がない方
要件を満たしているなら、施行前に申請を出すことで現行の手数料(10,000円)が適用される可能性があります。
「駆け込み申請」の注意点
手数料を節約するために準備不十分なまま申請を急ぐのは危険です。
- 不許可になれば手数料以上の損失 — 永住許可が不許可になった場合、再申請に時間がかかり、その間に新手数料が施行される可能性があります
- 不許可の履歴は残る — 不許可歴があると次の審査で不利になります
- 書類の不備は不許可の最大原因 — 急いで出した書類に不備があれば元も子もありません
元刑事として言います。焦って行動する人は、捜査の世界でもビジネスの世界でも判断を誤ります。申請要件を満たしているか、必要書類が揃っているか、まずは専門家に確認してから動いてください。
在留期間更新への影響
永住申請とは別に、多くの外国人が毎年または数年ごとに行う在留期間の更新にも影響があります。
更新手数料が6,000円から3〜4万円になれば、在留資格を維持するだけで年間数万円の負担増です。オンライン申請の割引が適用される可能性もあるため、オンライン申請に対応できる準備を今のうちに進めておきましょう。
同時に知っておくべき入管制度の変更
在留手数料の引き上げと前後して、入管制度には複数の重要な変更が進行しています。全体像を把握しておくことが大切です。
JESTA(電子渡航認証)の創設 — 2028年度〜
今回の入管法改正案には、アメリカのESTA(エスタ)をモデルにした「JESTA(ジェスタ)」の創設も含まれています。
- 対象:短期滞在ビザが免除される訪日外国人(ビザなし渡航者)
- 仕組み:渡航前にオンラインで個人情報・渡航目的等を事前申告
- 未認証の場合:航空会社等に搭乗拒否を義務づけ
- 開始時期:2028年度から
JESTAは主に観光客向けの制度ですが、日本の入管管理がデジタル化・厳格化に向かっていることを示す重要な動きです。
在留カードとマイナンバーカードの一体化 — 2026年6月14日〜
希望者は在留カード機能をマイナンバーカードに統合できる「特定在留カード」の運用が2026年6月14日に始まります。企業の人事担当者は、従業員の在留資格確認方法が変わる可能性があることを認識しておいてください。
育成就労制度 — 2027年4月施行
技能実習制度が廃止され、新たに「育成就労制度」がスタートします。手数料引き上げと合わせて、外国人材の受入れコスト全体が上昇する流れです。詳しくは当事務所のコラム「育成就労制度2027年完全ガイド」をご参照ください。
施行スケジュールと今後の流れ
改正案の今後のスケジュールを整理します。
- 2026年3月10日 — 入管法改正案を閣議決定(済)
- 2026年通常国会 — 衆議院・参議院での審議・採決
- 法律成立後 — 政令で実際の手数料額を決定
- 2026年度中(見込み) — 新手数料の施行
- 2026年6月14日 — 在留カード・マイナンバーカード一体化開始
- 2027年4月1日 — 育成就労制度施行
- 2028年度 — JESTA(電子渡航認証)導入
法案が国会を通過しなければ手数料改正は行われませんが、現時点では政府は今国会での成立を目指していますです。正式な施行日が決まり次第、当事務所でも情報を更新します。
よくある質問
Q1. すでに申請中の場合、新しい手数料が適用されますか?
現時点では、今回の改正案について経過措置の詳細はまだ確定していません。「申請中なら必ず旧手数料」「許可日基準で新手数料」などと、今の段階で断定するのは避けるべきです。
もっとも、2025年4月1日の手数料改定では、2025年3月31日までに受け付けた申請については、許可や交付が4月1日以降でも改定前の手数料で納付するという扱いが明示されていました。今回も同様の考え方が採られる可能性はありますが、正式には今後の法令・告示等の確認が必要です。
Q2. 不許可になった場合、手数料は返還されますか?
現行制度では、在留資格変更許可、在留期間更新許可、永住許可はいずれも、原則として許可されるときに手数料を納付する建て付けです。そのため、少なくとも現行制度の理解としては、不許可であれば国に納める手数料は発生しません。
ただし、今回の改正後の細かな運用が最終的にどう整理されるかは、施行前に公表される法令や運用案内を確認する必要があります。
Q3. オンライン申請で割引はありますか?
現行制度では、在留資格変更許可と在留期間更新許可について、窓口申請6,000円に対し、オンライン申請は5,500円と、オンラインの方が低額に設定されています。現在でもオンライン申請には一定の費用面のメリットがあります。
改正後にどの程度の差額が維持されるか、あるいは拡大されるかはまだ未確定ですが、少なくとも現時点では、オンライン申請対応を進めておく実務的な意味は十分あります。
Q4. 行政書士に依頼する費用と合わせると、かなりの金額になりませんか?
確かに、行政書士報酬を含めると初期費用は上がります。ただし、現行制度では在留手数料は原則として許可時に納付する仕組みですから、不許可になったからといって、直ちに国への手数料が二重に無駄になるわけではありません。
それでも専門家に依頼する意味があるのは、資料不足や説明不足による補正対応、再申請のための書類再収集、社内担当者の工数、審査長期化による就労・在留管理上の負担といった、手数料以外のコストがあるからです。さらに、今後の制度改正の施行時期によっては、再申請時に新しい手数料水準が問題になる可能性もあります。
そのため、総コストとリスク管理の観点から、最初に専門家へ相談する合理性があると言えます。
まとめ — 今やるべき5つのアクション
在留手数料の大幅引き上げに備えて、企業と外国人が今やるべきことを整理します。
-
1
外国人社員の在留資格・在留期限を総点検する
更新時期が施行後に当たる社員をリストアップし、コスト増を予算に反映させてください。 -
2
永住許可の申請要件を確認する
要件を満たしている方は、施行前に申請を出すことで現行手数料が適用される可能性があります。ただし、準備不十分な駆け込み申請は逆効果です。 -
3
雇用契約書・社内規程の手数料負担条項を見直す
手数料が数倍に上がった場合、企業負担を続けるか、負担割合を変更するか、方針を決めてください。 -
4
オンライン申請の準備を進める
マイナンバーカードの取得、在留申請オンラインシステムへの登録など、割引適用に向けた準備を今のうちに。 -
5
専門家(取次行政書士)に相談する
手数料が高額化する時代、不許可のリスクを最小化することが最大の節約になります。
手数料が上がる時代だからこそ、「一発で通す」ことの価値が上がります。準備を怠らず、確実な申請を。
行政書士からのアドバイス
在留手数料の引き上げは、外国人材を雇用する企業にとって新たなコスト要因です。しかし、焦って判断を誤ることの方がはるかに大きな損失を生みます。
大阪府警で18年間、知能犯捜査に従事してきた経験から言えることがあります。正しい情報を集め、冷静に判断し、確実に行動する——これが最善の結果を生む唯一の方法です。
「施行前に永住申請を出すべきか」「企業として手数料負担をどうすべきか」——判断に迷ったら、まずはご相談ください。現在の状況を整理し、最適なタイミングと方法をご提案します。
初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

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